3―2023年-2033年における世界保険市場の見通し
(図表3)は、2023年から2033年の間における収入保険料平均増加率の見通しである。
全世界では、この間の平均増加率は生保4.7%、損保5.0%となる中、アジアは、生保6.4%、損保7.2%と、世界を牽引することが予想されている。中でも、中国は生保7.1%、損保8.2%、さらにインドは、生保12.7%、損保13.2%と、大幅な増加が続くことが予想されている。
なお、2023年5月18日付Asia Insurance Reviewでも、Allianz Insurance Report2023が取り上げられており、「アジアは世界の生命保険の成長エンジンであり続ける」と紹介されている6。
また、2年前に公表されたAllianz Insurance Report(2021)では、2021年からの10年間は、パンデミックを契機としたリスク認識の高まり、持続可能性への対応、新興市場におけるさらなる保険の普及により、年平均5%以上の発展を予測、「黄金の10年間」とされていたが、その後の、ロシアによる「ウクライナ侵攻」それに伴うインフレ等により、生保の見通しは低下している。
(過去における全世界の保険料増加率見通しは、2021年-2031年生保5.7%、損保4.2%[2021年5月]、2022年-2032年生保4.9%、損保4.6%[2022年5月]、2023年-2033年生保4.7%、損保5.0%[今回]となっている。)
(図表4)は、2033年における収入保険料の予想である。
生損保とも引き続き、米国が世界でトップ、中国は第2位となっている。生保では、第2位の中国との差は大きいものの、インドが大きく浮上し第3位、続いて英国が第4位となることが予想されている(2022年はそれぞれインド第9位、英国第4位)。日本は、英国に次いで第5位(2022年は米国、中国に次いで第3位)とされている。
(図表5)は、2033年収入保険料見通しに基づく、生損保別の地域別構成比を示したものである。
高い増加率の結果、生損保とも、(図表2)で示した2022年の状況と比較し、アジアの占率が大きく増加しており、生保は43.1%(2022年36.3%)、損保は28.2%(2022年22.3%)となっている。特に生保は、43.1%と、アジアの収入保険料だけで、世界の半分近くを占めることとなる。
6 Asia Insurance Review「Asia: Region predicted to see annual growth of 7.5% in life business over the next decade」(2023年5月18日)。
4―おわりに
以上、Allianz Global Insurance Report(2023)に掲載されているデータ基づき、2022年の世界保険市場の状況ならびに、2033年の保険市場見通しについて、紹介してきた。
中でも、中国を抜いて人口世界第1位になった他、2022年の新車販売は日本を抜いて世界第3位、同年のGDPも世界第5位と、ここのところ躍進著しいインドが、生保マーケットにおいて2033年に世界第3位まで浮上してくるとされている7点や、その一方で日本は、インドのみならず、英国にも抜かれ、世界第5位になることが予想されている点は、インパクトがあり、注目される。
また、コロナ前は、中国は収入保険料において2030年頃には米国を凌駕して世界一になることが予測されていたが、昨年度のAllianz Global Insurance Report(2022)では、コロナ禍を経てその時期は2050年頃になるだろう、とされており、今後どうなっていくのか。
アジアを中心に、世界保険市場はダイナミックに動いており、動向については今後とも引き続き、注視していきたい。
7 Swiss Re Institute「India’s insurance market: poised for rapid growth」(2023年1月4日)では、インドは2032年の生保収入保険料で世界第5位になると予測されており、同レポートの概要については、小著「急成長を遂げるインド保険市場-2032年には生保収入保険料世界第5位に-」『保険・年金フォーカス』(2023年4月18日)でも紹介している。また、Fitch Solutions Companyが各国別に作成している「Insurance Report」では、インドの生保収入保険料は、2027年まで年平均8.7%で増加することが予測されており、筆者が国別に確認したところ、2027年の予測値では世界第11位であった。
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