(写真はイメージです/PIXTA)

ドイツ最大の保険グループであるアリアンツは一昨年、21年から世界の保険市場は「黄金の10年間」に入ると位置づけていましたが、22年からのロシアのウクライナ侵攻、世界的なインフレ進行を受けて不確実性が高まっています。本稿では、ニッセイ基礎研究所の有村寛氏が今後の世界の保険市場の見通しについて解説します。

3―2023年-2033年における世界保険市場の見通し

(図表3)は、2023年から2033年の間における収入保険料平均増加率の見通しである。

 

全世界では、この間の平均増加率は生保4.7%、損保5.0%となる中、アジアは、生保6.4%、損保7.2%と、世界を牽引することが予想されている。中でも、中国は生保7.1%、損保8.2%、さらにインドは、生保12.7%、損保13.2%と、大幅な増加が続くことが予想されている。

 

なお、2023年5月18日付Asia Insurance Reviewでも、Allianz Insurance Report2023が取り上げられており、「アジアは世界の生命保険の成長エンジンであり続ける」と紹介されている6
 

また、2年前に公表されたAllianz Insurance Report(2021)では、2021年からの10年間は、パンデミックを契機としたリスク認識の高まり、持続可能性への対応、新興市場におけるさらなる保険の普及により、年平均5%以上の発展を予測、「黄金の10年間」とされていたが、その後の、ロシアによる「ウクライナ侵攻」それに伴うインフレ等により、生保の見通しは低下している。


(過去における全世界の保険料増加率見通しは、2021年-2031年生保5.7%、損保4.2%[2021年5月]、2022年-2032年生保4.9%、損保4.6%[2022年5月]、2023年-2033年生保4.7%、損保5.0%[今回]となっている。)

 

 

(図表4)は、2033年における収入保険料の予想である。

生損保とも引き続き、米国が世界でトップ、中国は第2位となっている。生保では、第2位の中国との差は大きいものの、インドが大きく浮上し第3位、続いて英国が第4位となることが予想されている(2022年はそれぞれインド第9位、英国第4位)。日本は、英国に次いで第5位(2022年は米国、中国に次いで第3位)とされている。

 

 

 

(図表5)は、2033年収入保険料見通しに基づく、生損保別の地域別構成比を示したものである。

高い増加率の結果、生損保とも、(図表2)で示した2022年の状況と比較し、アジアの占率が大きく増加しており、生保は43.1%(2022年36.3%)、損保は28.2%(2022年22.3%)となっている。特に生保は、43.1%と、アジアの収入保険料だけで、世界の半分近くを占めることとなる。

 

 

 


6 Asia Insurance Review「Asia: Region predicted to see annual growth of 7.5% in life business over the next decade」(2023年5月18日)。

4―おわりに

以上、Allianz Global Insurance Report(2023)に掲載されているデータ基づき、2022年の世界保険市場の状況ならびに、2033年の保険市場見通しについて、紹介してきた。
 

中でも、中国を抜いて人口世界第1位になった他、2022年の新車販売は日本を抜いて世界第3位、同年のGDPも世界第5位と、ここのところ躍進著しいインドが、生保マーケットにおいて2033年に世界第3位まで浮上してくるとされている7点や、その一方で日本は、インドのみならず、英国にも抜かれ、世界第5位になることが予想されている点は、インパクトがあり、注目される。
 

また、コロナ前は、中国は収入保険料において2030年頃には米国を凌駕して世界一になることが予測されていたが、昨年度のAllianz Global Insurance Report(2022)では、コロナ禍を経てその時期は2050年頃になるだろう、とされており、今後どうなっていくのか。


アジアを中心に、世界保険市場はダイナミックに動いており、動向については今後とも引き続き、注視していきたい。 


7 Swiss Re Institute「India’s insurance market: poised for rapid growth」(2023年1月4日)では、インドは2032年の生保収入保険料で世界第5位になると予測されており、同レポートの概要については、小著「急成長を遂げるインド保険市場-2032年には生保収入保険料世界第5位に-」『保険・年金フォーカス』(2023年4月18日)でも紹介している。また、Fitch Solutions Companyが各国別に作成している「Insurance Report」では、インドの生保収入保険料は、2027年まで年平均8.7%で増加することが予測されており、筆者が国別に確認したところ、2027年の予測値では世界第11位であった。

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年8月31日に公開したレポートを転載したものです。

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