本来「守り抜くべきもの」は何か?
評価ばかりが高い土地が大量にあり、さらに地価は下がり続ける。となると、資産防衛の観点からも「漠然と保有している土地は売却すべき」という考え方が出てくるでしょう。とはいえ、これはあくまで理屈です。地主層には所有地の売却には強い抵抗感があります。「先代から引き継いだ土地は、何としても守り抜きたい」という気持ちです。
しかし、本来ここで守り抜くべきものは、単なる受け継いだ土地というよりもその資産価値なのではないでしょうか。さらに「守る対象が土地」というのは、「土地さえ持っていれば間違いない」という土地神話を前提にしているように思えてなりません。
都心からかなり離れた土地であっても、今ならまだ建売り用地として市場で売却が可能でしょう。しかし十数年後、さらには数十年後に、その地域で新規に住宅を購入する人がどれだけいるでしょうか。
郊外の土地は、もう将来性がない
都心近郊の便利な土地の値段が手の届く水準にまで下がった今日、多くの人はそうした地域へどんどん移り住んでいます。逆に30〜40年前にかなりの郊外に開発された新興分譲住宅地域は、今や限界集落になりつつあります。今この土地を売りに出してもほとんど買い手はいません。下手をすると、やがてこれらの地域は廃虚になってしまうかもしれません。
さらに言えば、かなり郊外の土地であっても今日の地価下落率は毎年数%レベルです。この程度の下落幅で済んでいるのは、先に述べた地主層の「土地所有を守りたい」といった信念のような気持ちに支えられているのではないでしょうか。
であるならば、今後厳しい地価情勢が認識されるにつれ、こうした気持ちを断念する人が増えてきましょう。そしてそれは、地価の下落を大きく加速するはずです。結局のところ、大きい声では言えませんが次のように申し上げておきます。「地主さん、土地の売却は早い者勝ちですよ」。
今の話は、不動産の整理の必要性をわかりやすく伝えるための、やや極端なケースだったかもしれません。要するに、皆さんのご所有の土地がどのような地域にあるかに応じて、以下に提案する「所有地の売却作戦」をご検討願いたいのです。
まずご所有の土地を、使用中の土地、使用はしていないが将来の使用や遺産分割用地等として残しておくべき土地、そしてそのどちらでもなく漠然と所有している土地との三つに区分します。そしてこの三番目の土地について、地価の将来性を冷静に考えることを含め、その売却を検討していただきたいわけです。