(写真はイメージです/PIXTA)

原油価格の変動は、原油の貿易を通じて世界の株式市場に影響を及ぼしています。そして、その影響を考える上では、原油取引の構造を踏まえておく必要があります。本稿では、ニッセイ基礎研究所の原田哲志氏が、原油価格変動と株式市場の関係について解説します。

3―各国の株式市場と原油価格の関係

このような世界の原油取引を背景に原油価格は各国の株式市場に影響を及ぼしている。図表4は2019年12月末から2023年7月末までの各国のMSCI国別指数のリターン(配当込みドル建て)と原油価格(WTI原油先物)への感応度 (原油価格が1%上昇すると株価が何%上昇するか) を示している。

 

原油感応度が高い国(原油が上昇すると株式が上昇しやすい国)としては、コロンビア、ブラジル、アルゼンチンといった原油輸出国が挙げられる。一方で、原油感応度が低い国としては、世界最大の原油輸入国である中国や米国、日本、韓国といった国が挙げられ、これらの国では原油価格が株価に与える影響は相対的に小さいと言える。

 

日本を含む原油輸入国も原油感応度がプラスとなっているのは意外に思われるかもしれないが、一般的に経済の拡大は株価の上昇と同時に原油需要増加・価格上昇をもたらすことから原油輸入国でも株価の原油感応度はプラスとなっている。

 

 

4―おわりに

ここまでで説明したように、原油価格の変動は原油の貿易を通じて世界の株式市場に影響している。世界の原油貿易は2000年代後半のシェール革命以前は米国が主な原油輸入国であったが、現在では米国は原油の輸出を行っている他、カナダなども原油輸出国となっている。

 

また、中国は米国を抜き世界最大の原油輸入国となっており、世界の原油取引の構造は変化が続いている。また、近年ではロシアのウクライナ侵攻によるロシアから欧州への原油輸出の禁止や、中長期的には原油など化石燃料から太陽光などの再生可能エネルギーへの転換が進められており、各国の株式市場への原油価格の影響を考える上では、こうした原油取引の構造を踏まえておくことが必要だ。

 

原油をはじめとしたエネルギーは産業や生活に不可欠な一方で、時として地政学リスクの顕在化などにより供給が不安定化し経済や株式市場に大きな影響を与え得ることから、その動向に引き続き注視したい。


【参考文献】
経済産業省資源エネルギー庁(2018)、「2018年5月、「シェール革命」が産んだ天然ガスが日本にも到来」、2018年6月12日

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年8月31日に公開したレポートを転載したものです。

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