日本からの直接投資は30％を占める

セター・タビシン首相のもとでタイ新政権が発足する中、タイ経済において重要な役割を果たしている日本の経済界は、次期政権の経済政策に一貫性と開かれたコミュニケーションがなされることを期待している。

バンコク日本商工会議所（JCC）の山下典昭会頭は、Thai PBS Worldの独占インタビューに応じ、「過去5年間にタイに投資された資本のうち、日本からの直接投資が30％を占めていることから、日本のプレゼンスの重要性を強調し、両国間の協力関係は今後も前進していくべきだ」と話した。

8月23日にセター氏が正式にタイの第30代首相に就任したことを受け、山下氏は「新政権は投資家の信頼に影響を与えるような政策を実行する前に、投資家とコミュニケーションをとるべきだ」と述べた。

「経済政策の持続可能性と継続性は重要だ。例えば最低賃金を引き上げようといった劇的な変化は望んでいない。賃金が着実に上昇していくことを望んでいる。また、新政権の政策が大幅に変わることなく、安定性と継続性を維持することを望んでいる。過去、政府が最低賃金を含む政策を見直す際には、現実とニーズを考慮しながら施策を設計するべく、私たちとの対話が行われた。私たちは、新政権が引き続き私たちの声に耳を傾けてくれることを期待している」（山下氏）

日本から高度な人材を呼び寄せるために

山下氏は、タイと日本の商業パートナーシップを深化させた立役者として、外国直接投資の促進を任務とするタイ政府機関である投資委員会（BOI）を挙げた。持続可能性に関するBOIのイニシアチブは、タイにおける日本の戦略を形成してきた。

「近年、タイではバイオ循環グリーン政策が推進され、ASEAN地域をリードしている。私たちは、こうした公約や取り組みに勇気づけられている。例えば、カーボンニュートラルへのインセンティブが提供されれば、外国人投資家による新技術の導入が促進されるだろう。電力取引の自由化の促進は、より多くの再生可能エネルギーを開発・利用するきっかけとなる」（山下氏）

「タイはASEANにおいて重要な位置を占めている。この地域の主要な産業拠点であり、技術革新と新技術の世界的な中心地となっている。製造業はパンデミックによる世界貿易の停止で大きな打撃を受け、タイ政府は経済の回復力、持続可能性、魅力を高めるため、高付加価値産業を推進してきた。それ以来、製造業は徐々に回復しているが、今回の危機は製造業のシステム的脆弱性を露呈させた。タイのトップ投資家たちが、その転換の先駆けとなることを望んでいる」（山下氏）

「そのために、短期的な対策として、日本から高度な技術を持った人材を呼び寄せることができるよう、外国人労働者に関する現行の規制、例えばタイ人従業員4人対外国人1人という雇用比率の見直しや緩和を提案したい。最も重要なことは、既存のサプライチェーンの支援や輸出競争力の強化といった政策の継続と一貫性の確保を新政権に望むことである。加えて、我々との継続的な対話が非常に望ましい」（山下氏）

JCC会頭は、次期政府に対し、投資に適した環境を作り上げてきた経済政策の安定性と継続性を維持することを望んでいる。

「不透明で、楽観はできない」

「過去の政変にもかかわらず、BOIを中心としたタイの投資促進体制により、日本企業は安定的に投資を拡大してきた。

タイの観光産業が回復している一方で、他の主要産業はゆっくりと回復している。経済成長の触媒となるような関連した取り組みを優先的に検討すべきだ」と山下氏は述べた。

「観光業の回復により、サービス業が改善していることは認識している。しかし、製造業の回復はまだ遅い。高い家計負債、高い生活費、金利の上昇により、タイの購買力は弱まっている。世界経済がまだ脆弱なため、輸出も苦戦している。経済成長はまだ不透明で、楽観はできない」（山下氏）

文＝アイメン・ベルカディ、フラン・ハン・シー