恐ろしい…子どもの価値観を侵食する“親の口癖” 「うちはお金がない」と言われ続けた子の末路【金融教育家が警鐘】

恐ろしい…子どもの価値観を侵食する“親の口癖” 「うちはお金がない」と言われ続けた子の末路【金融教育家が警鐘】
(※写真はイメージです/PIXTA)

よくも悪くも、両親のマネーリテラシーや行動は「お金の価値観」や「習慣」として子どもに引き継がれます。本記事では、金融教育家・上原千華子氏の著書『ファイナンシャル・セラピー』(日本能率協会マネジメントセンター)より一部を抜粋し、子どものお金の価値観やマネー習慣に大きく影響する「親の口癖」を紹介します。「言われたことがある」「耳にしたことがある」口癖がないかチェックしてみましょう。

「同じ情報」でも人によって解釈が異なるワケ

IT技術の発達で、情報が氾濫している現代社会。私たち現代人が1日のうちに触れる情報量は、平安時代の人たちの一生分、江戸時代の人たちの1年分ともいわれます。

 

一方、私たちの脳が処理できる情報量は、そのうちのほんのわずかです。そのため私たちは、無意識に自分に必要な情報を取捨選択、処理しています。

 

NLP(※)のコミュニケーションモデルによると、人間の脳は、外部からの情報を取り込んだ後、独自のフィルターを通して自分に必要な情報を受け取ります。だから、同じ状況下で同じ情報を得た場合でも、人によって受け取り方が違うことがあるのです。
 

フィルターにはさまざまなものがありますが、お金にまつわる情報を処理する際に特に出やすいのが、不要なものを排除する「削除」、事実を自分に都合よく歪めてしまう「歪曲(わいきょく)」、「Aとはこういうものだ」と一般化する「一般化」の3つです(図表1)。

 

出所:上原千華子著『ファイナンシャル・セラピー』(日本能率協会マネジメントセンター)
[図表1]人はどのように情報を処理しているのか 出所:上原千華子著『ファイナンシャル・セラピー』(日本能率協会マネジメントセンター)

 

これらのフィルターは、記憶や自分の価値観などに紐づいています。そのため、幼少期の出来事がお金のイメージを作り上げ、それによって形作られたフィルターを通した情報ばかりを集めて行動してしまう可能性があるのです。

 

※NLP…Neuro Linguistic Programming(神経言語プログラミング)の略。1970年代のはじめに、心理学と言語学の観点から新たに開発、体系化された実践的な心理学。

「両親のマネーリテラシーや行動」は子どもへの影響大

具体例を見ていきましょう。

 

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【外的な出来事:宝くじで3億円が当たった。】

 

〈Aさんの場合〉

●親から「お金は大事にしまって増やしなさい」と言われて育った

●宝くじに当たって嬉しかったが、すぐに気持ちを落ち着かせる

●よし! まずは貯金をして、どうするか考えよう

●貯金、投資、使う割合を決めて資金計画を立てる

●好きなものを予算内で買い、残りの資金は将来のために増やす

 

〈Bさんの場合〉

●両親は、臨時収入が入るとバーンと派手にお金を使い、上機嫌になっていた

●宝くじに当たって、自分は運がいいとハイテンションに

●よし! バンバン使うぞ!

●普段買えないような高級品を買いまくる

●気がついたらお金が手元にない

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このように、同じことが起きても、人によって違う行動をとるのは、フィルターが違うからです。特に、トラウマやマイナス思考があると、情報を歪める「歪曲」が起こりやすくなります。

 

このように、よくも悪くも両親のマネーリテラシーや行動が、お金の価値観や習慣として、子どもに引き継がれていくのです。

 

ちなみに、心理学でいう「思い込み(ビリーフ)」と「価値観」の定義は、厳密にいうと違います。本連載では、みなさんがシンプルに考えられるように、「お金に関する思い込み」「何にお金をかける価値を感じるか」「お金のことをどう思っているか」など、「お金に関する考え方全般」を「お金の価値観」と定義して、話を進めていきます。

「親の口癖」が作り出すお金の価値観とマネー習慣

それでは、親のどんな口癖が、どのようなお金の価値観やマネー習慣を作っていくのか、具体例を見ていきましょう。

 

【①お金はネガティブなもの】

●うちはお金がないのよ

●お金があると不幸になるのよ

●お金、お金って恥ずかしいわ

 

無意識につぶやいてしまいそうな口癖ですよね。「お金がない」という口癖は、実際に家計の状況が苦しい時に、思わず言ってしまうでしょう。

 

一方、実際にはそれほど経済的に困っていなくても、言ってしまう場合があります。それは、「過去に経済的に困窮した経験」がある場合です。

 

このような口癖を聞いて育った子どもは、「私はお金に縁がない」という価値観を作り上げ、毎日ケチケチとした生活を送る可能性があります。

 

逆に「お金があると不幸になる」という口癖の親もいます。たとえば、幼少期に両親が金銭感覚の違いで仲が悪くなり、離婚したといった経験がある人は、そのような思い込みを持っていることがあります。

 

また、このような口癖を聞かされて育った子どもは、「お金は不幸のもと」「お金は諸悪の根源」といったお金の価値観が形作られ、お金を持つと苦しい感情がわき起こることでしょう。その結果、お金から目を背けて、金銭管理をしたがらないかもしれません。

 

さらに、「お金はよくないものと言われて育った親」の子どももまた、お金に対してネガティブなイメージを持ちやすくなります。

 

お金は、生きていくうえで必要不可欠なものです。だからこそ、幼い頃に触れた親の口癖(=価値観)は、その人のお金の価値観形成に大きな影響を及ぼします。

 

【②投資は危ないもの】

●投資は危ないからダメ

●投資はギャンブル、貯金が一番

 

私の個別相談に来られた方の中にも、身内が投資に失敗して大きな損失を被(こうむ)ったため、「投資はギャンブル。やってはいけない」と言われて育った方が複数いました。

 

このような環境で育った子どもは、「悪銭身につかず」「働かざる者食うべからず」といった価値観を作り上げ、絶対に投資はしない、貯金しかしないという行動を取りがちです。

 

また、先日「ギャンブル好きの彼氏に困っています」というSNS投稿を見かけました。よく読んでみると、彼氏がつみたてNISAという投資にはまり、将来の資産形成のために彼女にもすすめているとのこと。

 

彼女は「彼氏が投資詐欺に巻き込まれているのでは?」と心配になって両親に相談したら、「投資はギャンブルだから、やめさせたほうがよい」とアドバイスを受けたそうです。

 

そのSNS投稿には、「問題なのはあなたとあなたの両親。お金の勉強をしましょう」とのコメントがついていました。

 

このように、まだまだ「投資はギャンブルだ」と思い込んでいる人は多いのですね。

 

ちなみに、日本は江戸時代まで投資先進国だったのをご存じでしょうか。世界で初めて先物取引が誕生したのも日本でした。

 

ところが明治時代に入り、国を強くするために工業国を目指すことになっていきました。それに伴い、小学校から「勤勉に働いて貯蓄に励もう!」と教育されるようになったのです。

 

その後も国のために、戦時中は戦争のためにと貯蓄が奨励され、投資の文化は失われていったと言われています。日本人が「貯金が一番」という価値観を持つようになったのは、こうした歴史から考えると自然な流れかもしれません。

 

しかし、健全に投資を行うことは、豊かな人生を送るうえでは大切な備えです。2024年はNISA制度が恒久化されるタイミングでもありますので、これを機に誰もが気軽に、健全な投資ができるよう、お金の価値観を見直していただければと思います。

 

【③お金にはパワーがある】

●ブランド物を身につけた私ってすごい!

●お金を使うと気分がいいわ

●人生、お金がすべてよ

 

誰でもきれいな衣服を身にまとうと、気分がよいものです。ただ、口癖になるほどお金や高級品に執着する場合は注意が必要です。対外的な価値基準で自分や他者を評価し、お金や物で心の穴を埋めている可能性があります。

 

美人でスタイルがよいCさん(仮名)のお母さん。歳を重ねても容姿にこだわり、高級ブランドのファッションや高級コスメなど、何かとお金がかかります。

 

「やっぱりブランド物を身につけると、気分が上がるのよね!」「高いものをバーンと買うと、気分がいいわ!」といった言葉を繰り返していました。

 

また、買い物に行くたびに、「とってもお似合いですね! モデルさんみたいです。服に合わせてこちらのバッグもいかがですか?」と店員さんからすすめられると舞い上がり、買い物自体が目的になっていきました。

 

気がつくと、家のクローゼットはお店のようにブランド物でぎっしり。貯金が底をつくなど、経済的にも困窮するようになっていったといいます。

 

幼少期からずっと母親の口癖を聞いていたCさんは、そうした母親の衝動買いに反発していましたが、無意識のうちでは「お金持ちは偉い」「お金で幸せが買える」「お金で人生の全てが決まる」といった価値観が作り上げられていきました。

 

そのうちCさんは、母親に反発していたにもかかわらず、嫌なことがあるたびに買い物でストレス発散をするようになりました。そして母親と同じように、収入以上の買い物をしてカードローンの残高が膨らんでいったのです。

 

一方、貧乏だった子ども時代の反動で、浪費につながるケースもあります。自分自身が苦しんだ経験から、「子どもには貧乏な思いをさせたくない」といった親心を持ち、何かと高級品にこだわってしまうのです。こうした口癖も、「お金にはパワーがある」という価値観につながっていくでしょう。

 

【④お金は人がくれるもの、お金は人に貢ぐもの】

●私のことが好きなら、お金ちょうだい

●ちょっとお金貸してくれない?

●お前はどうしようもない子だ!

 

この口癖は、精神的にも経済的にも破綻につながりやすいので、要注意です。子どもの前では絶対に言ってはいけません。

 

この口癖の背景には、次のような体験があったと考えられます。

 

●愛情の代わりにお金をもらう習慣があった

●経済的に自立したくない、自分は稼げない

●自分の価値を否定されて育った

 

また、その子どもは「お金は愛情の印」「お金は人がくれるもの」「私はお金を持つ価値がない」などの価値観を作り出します。その結果、経済的に依存したり、お金で人を操ろうとしたり、経済的に余裕がないのに、人にお金を貢いでしまったりします。

 

ここまでにご紹介したよくある具体例を表にまとめました(図表2)。心当たりがないか、チェックしてみてください。

 

出所:上原千華子著『ファイナンシャル・セラピー』(日本能率協会マネジメントセンター)
[図表2]親の口癖が作り出すお金の価値観とマネー習慣 出所:上原千華子著『ファイナンシャル・セラピー』(日本能率協会マネジメントセンター)

 

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<ポイント>

幼少期の出来事がお金のイメージを作り上げ、それによって無意識のうちに形作られていくのがお金の価値観である。「言われたことがある」「耳にしたことがある」口癖がないか振り返ってみよう。

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上原 千華子

(株)ウェルス・マインド・アプローチ代表取締役、金融教育家

 

 

欧米投資銀行勤務歴17年、個人投資家歴26年。証券外務員一種、最新の心理学NLPを使ったマネークリニック®認定トレーナー。金融知識だけではお金の不安が消えなかった経験から、心理学を取り入れたライフプランと資産運用を教えている。「お金の教育をもっと身近に、心から豊かな人生を」がモットー。

2022年より「3ヶ月マネー実践講座」を提供開始。ライフプランから資産運用まで自分でできるようマンツーマン指導。多忙な中小企業経営者から支持され、口コミでビジネスが広がっている。

 

※「ウェルス・ファイナンシャル・セラピー®」は株式会社ウェルス・マインド・アプローチの登録商標です(登録668701)。

※本連載は、上原千華子氏の著書『ファイナンシャル・セラピー』(日本能率協会マネジメントセンター)より一部を抜粋し、再編集したものです。

「お金の不安」をやわらげる科学的な方法 ファイナンシャル・セラピー

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上原 千華子

日本能率協会マネジメントセンター

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