「正解だけを知りたい人」が陥りやすい罠
SNSを見ていると、どの投資商品が儲かるか正解を探し求めている人が多いようです。なぜ正解を求めたがるのかを受講生さんに尋ねてみたところ、次のような答えが返ってきたのが印象的でした。
「その気持ちはとても分かりますよ。私もはじめはYouTubeで検索して勉強していましたから。
でもいろいろ調べても難しいし、断片的な情報ばかりだし、結局どうすればよいか分からなかったんですよね。
私はちゃんと学ぼうと決心して講座を受講したけど、多くの人は、投資って『これが正解だよ』って教えてもらえれば、それでいいやと思っているんじゃないかしら?」
このような「どれが正解かだけを知りたい人」は、ある状況に陥りやすくなります。
それは「『答えを教えてあげよう』とする人の戦略にはまる」ということです。時には、誤った情報に踊らされることもあるでしょう。
SNSやブログには、バズるタイトルがつけられたネタがたくさん提供されています。その中には、もちろんあなたにピッタリの情報もあるでしょう。もしあなたが、どの情報が自分に必要で不要なのか選別し、自分なりの答えが出せるのなら、その情報はとても有益なものになります。
逆に、もし選別できないのなら注意が必要です。断片的な情報をつなぎ合わせて、自分なりの解釈をしてしまうからです。
特に「知る人ぞ知る秘密の投資商品があるのでは?」と思っている人は要注意です。かなりの確率で、「これに投資すれば必ず儲かる」といった投資詐欺にまんまと引っかかります。
騙す側はプロです。「お金の不安を解決する方法がありますよ。その答えが〇〇商品ですよ。紹介者限定です。元本保証です」などの手口で心の隙間に入り込みます。
また、恋愛感情につけ込んだロマンス詐欺なども横行しています。マッチングアプリやSNSで知り合った人が、「自分たちの将来のために投資をしよう」など甘い言葉をささやいて、投資話を持ちかけるようです。
金融の専門家でない人に投資商品を勧誘されたら、必ず「金融商品取引業に登録されていますか?」と質問してください。もし答えがNOなら、絶対に契約してはいけません。または、金融庁のホームページで登録業者を確認しましょう。
大事なのは「どの商品が儲かるか」ではない
本当に大事なのは、「自分で答えを出せること」。そのためには、信頼できる書籍や講座で体系的に学ぶことが基本になります。
最低限の金融知識を身につけ、自分で判断し、運用できる力をつけることが、自分自身を守ることにつながるのです。そうでなければ、永遠に誰かに依存し、搾取されることになります。
本当に経済的に豊かな人生を送りたいなら、自分で判断できるほどの知識を最低限身につけましょう。
さまざまな「商品」とそのリスクを知ろう
投資リスクとは「危険」という意味ではなく、「価格のばらつき・振れ幅」を指します。
振り子をイメージしてください。振り子は大きく振れることもあれば、振れ幅が小さいこともあります。大きなリターンがほしければ、大きなリスクを伴いますし、小さなリターンでよければ、小さなリスクで済みます。
リスクには大きく分けて「市場リスク」「信用リスク」「流動性リスク」の3種類がありますが、ここではさらに、金融商品や地域によるリスクについて解説します。
詳しくは他の書籍などでも解説されていますので、本稿では最低限知っておいていただきたい点のみに絞っています。もうすでに知っているという方は、先を読み進めていただいても大丈夫ですよ。
まず、金融商品には主に次のようなものがあります。
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<主な金融商品>
●株式
●債券
●投資信託
●不動産
●金(ゴールド)
●為替(FX)
●商品先物
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それぞれのリスクを簡単に説明していきますね。
<株式>
株式とは、株式会社が資金を出資した人に対して発行する有価証券です。業績が上がれば株価は上がり、株主は配当金や売却益を期待できます。
一方、会社の業績が悪ければ株価が下がり、上場廃止になると株式が紙くずになることも。金融商品の中では比較的リスク・リターンが高い商品です。株主は損失を被る可能性があるため、事業内容や経営状態を把握し、銘柄選定することが重要です。
<債券>
債券とは、国や地方自治体、企業など(発行体)が、投資家から資金を借り入れるために発行する有価証券です。投資家が発行体にお金を貸して利子を受け取り、満期が来たら貸したお金(額面金額)を返してもらいます。
発行体に支払能力がある限り、利子と額面金額が受け取れるため、株式よりはリスク・リターンが低い資産です。
<投資信託>
投資信託とは、投資家から集めた資金を使って、運用のプロが株式や債券などに投資・運用する商品です。投資額に応じて運用成果の収益が分配されます。対象資産によって値動きなどのリスクやリターンが異なります。
<不動産>
不動産投資には、居住用マンションや戸建住宅などの実物不動産を保有する以外にもさまざまな種類があります。REIT(リート、Real Estate Investment Trust)という、小額から気軽に投資できる不動産投資信託もあります。
対象物件や地域にもよりますが、REITのリスク・リターンは株式と債券の中間くらいと考えられます。
<金(ゴールド)>
「有事(ゆうじ)の金」という格言があるように、金は戦争など世界経済を揺るがす状況下で、資産の逃避先として選ばれてきた歴史があります。
ただ、イメージほど安全ではありません。価格変動などのリスクが高い割には、リターンはそれほど高くないからです。
また債券のように利息がつかず、株式のように配当も出ません。メインで投資するよりは、脇役的な投資商品だと考えましょう。
<為替(FX)>
為替は一番身近に感じる投資商品かもしれませんが、ハイリスク・ハイリターン商品です。土日祝日以外は24時間取引されており、価格変動も激しい為替取引。寝ている間に価格が大きく変動することもあり、投資初心者にはおすすめできません。
為替のメリットを享受したいのであれば、海外株式や海外債券に投資する方法もありますが、あまり為替のニュースに振り回され過ぎないようにしましょう。
<商品先物>
先物取引とは、予(あらかじ)め定められた期日(満期日)に、対象となる資産を予め決められた価格で売買することを約束する取引で、こちらも投資初心者には向かないハイリスク・ハイリターンの商品です。原油や金やトウモロコシ、電力、ゴム、大豆などが主な商品です。
商品別のリスクがわかったところで、次に覚えておきたいのが、同じ商品でも対象地域によってリスク・リターンが変わるということです。
わかりやすい例をあげると、国内と海外を比べると、同じ資産でも海外の方がリスク・リターンが大きくなります。なぜだか分かりますか?
それは、「為替リスク」があるからです。海外の商品を購入する時は日本円から外貨へ、売却時は外貨から日本円に転換する必要があるため、商品由来の価格変動に、為替変動要因が加わります。その分、リスク・リターンが大きくなるのです。
また、海外と言っても、国によってリスク・リターンが変わります。先進国とアジアの新興国を例に考えてみましょう。先進国は経済が安定している分、経済成長は限定的です。一方新興国は、先進国に比べると経済基盤は不安定ですが、伸びしろがあります。つまり、新興国の方がハイリスク・ハイリターンになります。
自分の「リスク許容度」を考える
ここまで読んでみて、「リスクを取ってでも資産を増やしたい!」と思った方もいれば、「資産が減るのが嫌だから低リスク商品から始めよう」と思った方もいらっしゃると思います。
運用成果がマイナスになった場合に、どれくらいまでマイナスを受け入れられるのか、その範囲を「リスク許容度」といいます。
リスク許容度は人によって違います。主な要因は、運用の考え方や投資経験、年齢、家族構成、収入の見通し、支出・貯蓄の状況などです。
図表2を見ながら、ご自身のリスク許容度はどのようなものか考えてみると、どのような資産運用をするのかひとつの参考になりますよ。
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<ポイント>
商品ごとにさまざまなリスクがあり、どの程度リスクを許容できるかは、人によって大きく異なる。リスクに対する考え方は、資産配分を決める際の判断基準にもなる。
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上原 千華子
(株)ウェルス・マインド・アプローチ代表取締役、金融教育家
欧米投資銀行勤務歴17年、個人投資家歴26年。証券外務員一種、最新の心理学NLPを使ったマネークリニック®認定トレーナー。金融知識だけではお金の不安が消えなかった経験から、心理学を取り入れたライフプランと資産運用を教えている。「お金の教育をもっと身近に、心から豊かな人生を」がモットー。
2022年より「3ヶ月マネー実践講座」を提供開始。ライフプランから資産運用まで自分でできるようマンツーマン指導。多忙な中小企業経営者から支持され、口コミでビジネスが広がっている。
※「ウェルス・ファイナンシャル・セラピー®」は株式会社ウェルス・マインド・アプローチの登録商標です(登録668701)。