インフレ鎮静化により「利下げ」が視野に
焦点のインフレは、CPIが2022年6月の9.1%から今年7月は3.2%に急低下した[図表8]。
インフレ要因を分析すると、エネルギー及びサプライチェーン寸断による財・食品のインフレがほぼ沈静化しており、いまもっとも燃え盛っている住居費(帰属家賃)も、それに12ヵ月程度先行する住宅価格が低下に転じているので、1年後には2%以下に収斂していくだろう[図表9]。
焦点の賃金上昇率は平均時給(AHE)が前年比4.4%と下落ペースが鈍くFRBを心配させている。しかし、
1.最近の上昇をけん引してきた低賃金労働者(生産・非管理労働者)の伸びが急鈍化していること
2.高賃金労働者(プロフェッショナル・管理労働者)の伸びは低く、かつ機械化によるリストラで上昇に歯止めがかかるとみられること[図表10]
3.新産業革命による生産性上昇により賃金上昇のすべてを価格転嫁する必要はないこと
等のポジティブな面も指摘できる。FRBはこれ以上の利上げを我慢するだろう。
となると、いずれ利下げが視野に入るだろう。利下げには供給力投資を強めインフレ圧力を引き下げるという側面がある。
住宅価格抑制には、利下げによる住宅供給増加というチャンネルが有効である。また、賃金抑制には利下げが設備投資増加を通して労働代替・賃金下落圧力を生むというチャンネルが期待される。ジャクソンホールのコンファランスでは、利下げの合理性も議論のテーマとして浮上するかもしれない。
米国長期金利は名目4.26%、実質1.93%の先週末がピークかもしれない。①今後の景況感、②インフレ圧力、③利上げ圧力、のいずれもが金利低下に作用する。2024年にかけては利下げから始まる株高も見込み得る情勢といえる。
旺盛な需要創造で「過剰供給」回避
現在の米国では、過剰供給力が放置された1930年時代の大恐慌時と異なり、新産業革命による生産性の向上(=供給力の増加)が旺盛な需要創造でカバーされるという好循環が起き始めている、と考えられる。

![[図表8]米国CPI項目別寄与度推移](https://ggo.ismcdn.jp/mwimgs/f/a/540/img_fa2dbccee1dfec01eb74eb9d357ccdad73142.jpg)
![[図表9]米国住居費インフレ予想(サンフランシスコ連銀)](https://ggo.ismcdn.jp/mwimgs/1/c/540/img_1cfd46b6a86463a6207192a0f7d1a89353341.jpg)
![[図表10]米国賃金水準別時間当り平均賃金の伸び](https://ggo.ismcdn.jp/mwimgs/1/4/540/img_14e77e9e7aaf67ebd91b28e5c4ca623469255.jpg)
![[図表11]米国住宅不足深刻化…低下する空き家](https://ggo.ismcdn.jp/mwimgs/a/a/540/img_aa591dd66626b6a208a2a4b7a311110047925.jpg)