米国の「強さ」と中国の「弱さ」は2024年にかけて“増幅”
2023年に関し、大半のエコノミストは2大国米中の経済見通しを間違えた。昨年末時点では金融引き締めにより米国リセッション入りは不可避、バブル化した米国株の暴落不可避、との見方が大勢であった。
他方、中国はコロナ禍によるロックダウンが解除され、経済の正常化、反動増が見込まれたため、期待が高まった。しかし米中ともに結果は予想とは逆であった。
見込み違いの主因は、米国、中国経済において短期的圧力を凌駕する、強烈な反対方向の構造的圧力が強く働き始めているためと考えられる。
米国経済を支えている構造的強さはなにかといえば、「新産業革命による生産性の上昇」と「財政とアニマルスピリット(=株高)による旺盛な需要創造」であり、中国の構造的弱さは、「バブル崩壊によるデッドデフレーション(=バランスシート不況)」と「中国独り勝ち時代の終焉と一人負け時代の開始」であろう。
この米国経済の構造的強さと中国経済の構造的弱さは2024年にかけて増幅される。2024年にかけて米中の成長率格差が顕著になっていくだろう。
2015年型チャイナショックは起きない
当面株価調整色が強まっているが、深刻な下落は起きないだろう。2015年は中国のIMFSDR構成通貨国になるために資本移動規制の撤廃が実施されたが、同時に進行した国内経済の悪化が巨額の資本流出、株下落、人民元の急落に結び付き、中国発の世界金融危機が心配された(その後の資本移動規制導入により事態鎮静化)。
しかしいまは、中国の資本コントロール、国内金融に対する政府・中銀の介入が著しく強化されており、金融危機の世界伝播は起こりえないと考える。また米国経済が驚くほど強く、日本経済も力強さを増しているといえよう。
武者 陵司
株式会社武者リサーチ
代表
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