GAFAMに続き、「FANG+」にも出遅れる日本
気がつくと、かつては世界を唸らせていた素晴らしい日本の商品・サービスは影を潜め、2000年代に世界を席巻したGAFAMに続き、2010年代の後半からは、新たに海外企業の商品・サービスが出現するようになりました。
フェイスブック、アマゾン、ネットフリックス、グーグル、アップル、アリババ、バイドゥ、エヌビディア、テスラ、ツイッター(現・X)といった、欧州や中国の企業も含めた新たな列強企業は、いわゆるFANG+(ファングプラス)と呼ばれています。
彼らの商品・サービスが日本人の消費社会にもあふれるようになりましたが、やはりそこには日本の企業の名前はありません。
GAFAM及びそれに追随する新たな先進企業群は、VUCA時代(常識を覆すような社会変化が次々と起こり、将来を予測するのが困難な時代)であっても、いずれも自社の技術やアイデアなどの知財を顧客や社会の価値に変える手法を実践し、自社の商品・サービスの世界観を見事にブランドに活かし、ファンを増やすことで安定した売上獲得を実現しています。
徹底した「知財ミックス」戦略で魅了し続けるアップル
その分かりやすい例がアップルです。アップルは、未来を見通した商品・サービスを世に送り出し、常にファンを魅了し続けています。
製品の機能や性能のクオリティはもちろん、製品デザイン、製品名称、アイコン・インターフェース、製品パッケージ、周辺機器、アクセサリー、さらには店舗外観やデバイスの起動音に至るまで、あらゆる角度から隅々まで技術やアイデア、デザインなどの知財をミックスで張り巡らし、アップル全体の企業ブランドを構築しています。
一方でアップルは、知財を張り巡らせると同時に、明確なビジョンを持っている点でも特筆すべき企業です。アップルのビジョンとは「人の五感を日常的に包み込むことで、徹底して快適で豊かな生活空間をつくりだす」という構想です。
Apple Vision ProやApple Watch、AirPodsなどのウェアラブル商品、Apple Musicなどのサービスに象徴されるように、人の五感に寄り添い日常を丸ごと包み込んで快適に過ごしてもらい続けることで、常に収益が生み出される仕組みを完成させることがアップルの経営ビジョンなのです。
もともとはマイクロコンピュータの「Apple I」の製造・販売から始まったアップルは、当初はApple Computer, Inc. という社名でしたが、もはやコンピュータに限定せずに知財を総動員したあらゆる商品・サービスを展開する意志から、2007年にComputerを外し、社名を単にApple Inc.としたことからも、彼らのビジョンの確立が窺い知れるものです。
革新的な知財で新たな商品・サービスを創造し、どのように社会に普及・浸透させ、収益(キャッシュ)を自社に還元させるのか、そして、その収益の一部をどこに投資して、次の時代の社会・顧客への価値につながる新たな知財を生み出すかといった循環的な仕組みが入念に設計され、それを愚直に実践し続けています。
だからアップルは、VUCA時代でも常に進化し、継続的に社会・顧客に新たな価値を提供し続け、長期にわたり成長することができているのです。
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