(写真はイメージです/PIXTA)

7月、米国の住宅着工件数は市場予想を小幅に上回る145.2万件でした。一方、着工許可件数は市場予想を小幅に下回りました。足元の住宅ローン金利上昇が、住宅市場の回復に水を差す可能性があります。本稿ではニッセイ基礎研究所の窪谷浩氏が、米住宅市場の動向について解説します。

1.結果の概要:住宅着工は市場予想を上回った一方、許可件数は市場予想を下回る

8月16日、米国センサス局は7月の住宅着工、許可件数を発表した。住宅着工件数(季節調整済、年率)は145.2万件(前月改定値:139.8万件)と143.4万件から下方修正された前月、市場予想の145.0万件(Bloomberg集計の中央値)を小幅に上回った(図表1、図表3)。
 

着工許可件数(季節調整済、年率)は144.2万件(前月改定値:144.1万件)と144.0万件から小幅上方修正された前月を上回った一方、市場予想の146.3万件を下回った(図表2、図表5)。

 

 

2.結果の評価:戸建てが増加に転じた一方、集合住宅は減少

住宅着工件数の伸びは前月比+3.9%(前月:▲11.7%)と大幅な減少となった前月の反動もあってプラスに転じた(図表3)。集合住宅が▲1.7%(前月:▲16.5%)と2ヵ月連続でマイナスとなった一方、戸建てが+6.7%(前月:▲9.0%)とプラスに転じて全体を押し上げた(図表4)。
 

前年同月比は+5.9%(前月:▲10.4%)と前月からプラスに転じた。内訳をみると、集合住宅が▲0.8%(前月:▲13.4%)と小幅ながら2ヵ月連続でマイナスとなった一方、戸建てが+9.5%(前月:▲8.8%)と15ヵ月ぶりにプラスに転じて全体を押し上げた。
 

地域別寄与度(前月比)は、南部が▲0.7%ポイント(前月:▲5.1%ポイント)と2ヵ月連続でマイナスとなった。一方、中西部が+1.1%ポイント(前月:▲6.2%ポイント)、西部が+3.4%ポイント(前月:▲0.7%ポイント)と前月からプラスに転じたほか、北東部が+0.1%ポイント(前月:+0.3%ポイント)と小幅ながら2ヵ月連続でプラスを維持した。

 

 

 

先行指標である住宅着工許可件数は、前月比+0.1%(前月:▲3.7%)と前月から小幅ながらプラスに転じた(図表5)。こちらも集合住宅が▲1.0%(前月:▲13.0%)と2ヵ月連続でマイナスとなった一方、戸建てが+0.6%(前月:+2.4%)と7ヵ月連続のプラスとなって全体を押し上げた(図表6)。
 

前年同月比は▲13.0%(前月:▲15.3%)と前月からマイナス幅は縮小したものの、12ヵ月連続のマイナスとなった。戸建てが+1.3%(前月:▲2.5%)と17ヵ月ぶりにプラスに転じた一方、集合住宅が▲30.8%(前月:▲31.3%)と5ヵ月連続のマイナスとなり、全体を押し下げた。

 

 

一方、全米建設業協会(NAHB)による戸建て新築住宅販売のセンチメントを示す住宅市場指数は、8月が50(前月:56)と8ヵ月ぶりに悪化したほか、市場予想(56)も下回った(図表7)。

 

内訳は販売現況が57(前月:62)、販売見込みが55(前月:59)、客足が34(前月:40)といずれも前月から悪化した。

 

 

NAHB会長のアリシア・ヒューイ氏は「住宅ローン金利の上昇と、建設労働者の不足、建設可能な土地の不足、配電用変圧器の継続的な不足に起因する建設コストの高騰が、8月の建設業者のセンチメントを冷え込ませた」と述べた。足元の住宅ローン金利の上昇が、住宅需要を低下させ、新築住宅を中心に底打ちがみられた住宅市場の回復に水を差す可能性があろう。

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年8月17日に公開したレポートを転載したものです。

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