平均的な共働き夫婦、もらえる年金額で「十分生きていける?」
多くの日本人が関心を寄せている、将来の年金受給額。毎月納付しているものの、自分がいくら受給できるのか、いまひとつよくわからないという人も多いだろう。
自営業者や専業主婦が手にする国民年金(老齢基礎年金)の受給額は、下記で計算できる。
●国民年金受給額
年金額×(保険料の納付月数÷480ヵ月)
会社員や公務員などが対象となる厚生年金(老齢厚生年金)は、下記で計算できる。
●厚生年金受給額
➀加入期間が2003年3月まで
平均標準報酬月額(≒平均月収)×7.125/1000×2003年3月までの加入月数
②加入期間2003年4月以降
平均標準報酬額(≒平均月収+賞与)×5.481/1000×2003年4月以降の加入月数
厚生労働省の調査によれば、男性会社員(平均年齢44.5歳)の平均給与は月収で34.2万円、年収で554.9万円となっている。一方、女性会社員(平均年齢42.3歳)の平均給与は月収で25.8万円、年収で394.3万円だ。男性も女性も年齢と共に給与は上がり、50代前半でピークとなる。
【年齢・男女別「年収」の推移】
20~24歳:3,401,800万円 / 3,131,200万円
25~29歳:4,273,600万円 / 3,726,300万円
30~34歳:4,959,000万円 / 3,907,800万円
35~39歳:5,600,500万円 / 4,111,400万円
40~44歳:6,008,200万円 / 4,238,500万円
45~49歳:6,360,800万円 / 4,317,100万円
50~54歳:6,722,600万円 / 4,315,800万円
55~59歳:6,740,100万円 / 4,280,700万円
出所:厚生労働省『令和4年賃金構造基本統計調査』より
では、20~60歳まで平均的な給与を手にしてきた夫婦の場合、65歳から受け取る年金はどれくらいになるのだろうか?
計算を簡略化して、上述の②の式で算出すると、厚生年金部分は男性で10.3万円、女性で7.4万円。国民年金は満額支給であれば、夫婦で月30.9万円を手にできることになる。
つまり、平均的な共働き夫婦なら、月31万円ほどの年金額だ。非正規社員の安すぎる給与額が話題にのぼる昨今、年金でこれだけもらえるなら、高齢夫婦ふたりで十分暮らしていけそうではないか――。
税金が引かれ、20年後には目減りの可能性、それから…
ただ、ここで注意が必要だ。「31万円」というのはいわば給与でいうところの額面。公的年金のうち、老齢年金は65歳未満で108万円以上、65歳以上であれば158万円以上で税金がかかってくる。なお、所得税の計算式は以下の通りだ。
所得税=(年金額-社会保険料控除など各種控除)×5.105%(所得税率5%×復興特別所得税1.021)
※1円未満は切り捨て
所得税は、社会保険料や各種控除(配偶者控除や扶養控除、特定扶養親族控除など)を引いた金額に課税される。すると、実際に手にする年金は額面の85%〜90%程度に目減りすることになり、上述の例の夫婦なら、2人でおよそ26万円程度になる。
総務省『家計調査 家計収支編』(2022年平均)によると、夫婦ともに65歳以上、かつ無職の1ヵ月の生活費は23.6万円。これを見る限り、共働き夫婦なら、税金等を引かれた手取り額でもなんとかやっていけそうだが、2040年半ばくらいには「年金は2割目減りする」との政府の試算もある。そうなれば、年金の手取り額が月26万円の元共働き夫婦の場合、20万円強になってしまうのだ。
そうなると、生活費が現在と同額だと仮定しても、月2万~3万円の赤字に陥ってしまう。
そもそも、人間の生活は計画通りにはいかないもの。年齢を重ねれば、だれしも病気のリスクが生じる。病気が原因で想定外の大きな出費があるかもしれない。また同様に、介護費用も心配だ。長年住んでいる自宅があるなら、屋根や外壁の大規模修繕、バリアフリーのための工事と、不安は尽きない。
そもそも、自分たちが引退する前に、双方の親の介護問題の発生も心配だ。自立したはずの子どもが失業して親元に戻ってくる可能性だって否定できない。
つまり、受け取る年金額内に生活を収めようと考えること自体、すでに現実的とはいえないということだ。
もちろん年金は、老後生活を支える重要な柱であることには違いない。だが、それだけを当てにするのではなく、現役時代からあらゆる方法で資産を築く、年金以外の収入源を確保するといった対策が、不可欠なのである。
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