成年後見制度だけじゃない!認知症になった親の「財産管理法」
……A.メリットとデメリットを考えて選択を
判断能力が不十分な人の財産管理のために使われるのが「成年後見制度」です。超高齢社会を支える制度として、介護保険とともに2000年にスタートしました。
ところが、現実には利用者があまり増えていないのです。なぜかというと、家庭裁判所への手続きが非常に煩雑なこと、お金を使ううえでの制約が多いこと、年に1度裁判所への報告が必要なことなどがあげられます。
また、家族以外の人が後見人になった場合には、報酬の支払いが必要になることもハードルを上げる一因です。実際に後見人に選出されるのは、約7割が司法書士や弁護士などなのです。ただ、高齢者本人の財産をしっかり守るという意味では信頼がおける制度でもあります。
もっと柔軟に親の財産を管理できる制度に「家族信託」があります。「信託」とはその名のとおり、誰かを「信じて託す」ということ。親(委託者)が元気なうちに、不動産や銀行口座などの管理を子ども(受託者)にまかせる制度です。
信託契約を結ぶ必要はありますが、成年後見制度のように裁判所への報告義務などはなく、親の資産を柔軟に活用することができます。
一方で、家族といえども悪用することもありうるため、トラブルも発生しやすく、信頼できる家族がいる前提の制度です。不安がある場合には「信託監督人」という第三者をおき、受託者の監督をしてもらうという方法もあります。親に適正な判断能力があるうちに検討したいものです。
判断能力はあるけれど、骨折や脳障害などで体の自由がきかなくなった場合も、銀行などに出向くことはむずかしくなります。その場合「財産管理等委任契約」を結ぶ方法があります。これを結ぶことで、金融機関の出入金、不動産収入の管理、施設や入院費の管理などを代理で行うことができるのです。
【3つの財産管理法】
■成年後見制度
認知症などで判断能力が衰えた人にかわって、成年後見人が財産の管理や契約の凍結などを行う制度。家庭裁判所に申し立てをする。
任意後見:本人に判断能力がある段階で後見人を選んで契約を交わす。
法定後見:判断能力に欠け自分で後見人を選べなくなったとき、家庭裁判所が後見人を選ぶ。
メリット
・財産管理者に対して公的チェック機能あり。
・後見人が手続きや支払い、契約解除もできる。
デメリット
・本人の判断能力が衰えるまで財産管理は不可。
・財産管理者への報酬、コストがかかる。
■家族信託
本人の判断能力が衰えていない段階で、資産の一部や全部の管理を家族に託す信託契約を結ぶ。不動産の名義人などは書きかえが必要。
メリット
・契約を結べば本人の判断能力に関係なく財産管理ができる。
・成年後見制度より自由度が高い。
デメリット
・財産管理者に対する公的なチェック機能がない。
・“おひとりさま”は利用できない。
■財産管理等委任契約
判断の力はあるが、体が不自由になったことで外出がままならないとき、財産の管理や生活上の事務を委任する契約。
メリット
・本人が元気なうちから財産管理が可能。
・死後の事後処理まで委任できる。
デメリット
・本人の判断能力が低下してからは契約できない。
・本人に不利益な契約などの解約はできない。