(※写真はイメージです/PIXTA)

不動産の相続では、相続人と被相続人どちらも準備が大切です。また地主の場合は大きな土地を相続するため特に入念な対策が必須でしょう。しかし最近、「地主の家系で相続税を支払えないトラブルが増加傾向にある」と、FP Office株式会社の清水豊FPはいいます。親の遺産をあてにして暮らしていたAさん(50代男性、都内在住)の事例から、不動産を相続する際に起こりがちな問題点と解決策をみていきましょう。

これでは相続税を払えない…Aさんが始めた「苦肉の策」

現預金のほとんどは母親と姉2人が相続してしまったため、約3,000万円の相続税は死亡保険金1,000万円では賄えません。困ったAさんは、まず姉2人に納税資金を融通してくれないか相談してみました。

 

しかし、「子どもの教育資金に使うから」と2人ともあっさり拒否。しかたなく、いったん母親から借りる形で約1,000万円工面しました。しかし、それでもまだ1,000万円ほど足りません。アパートの売却も考えましたが、不動産業者に「納税期限までに間に合うかわからない」と言われてしまいました。

 

最終的に、自宅を担保にすることで銀行から借り入れを行い、なんとか納税期限までに相続税の支払いを終えました。

 

アパートのローン完済まではあと10年近くあり、前述のように不動産収入だけでは母親と銀行への返済ができそうにありません。Aさんは、慌てて就職先を探し始めました。しかし、年齢的にもキャリア的にもなかなか採用してくれる会社は見つかりません。ハローワークに通い詰める日々が始まりました。

 

アパートの売却先もなかなか見つからず、現在は警備関係の仕事をするなどして収入を得ていますが、給与は借金返済に消えてしまう状態が続いています。

相続税は“現預金で一括払い”が原則!

相続税は基本的に、「現金一括払い」がルールになっています。Aさんが相続税を払えなくなってしまったのも、ここに原因があります。

 

不動産などの換金しにくい遺産が多いと、相続財産の評価額は高額になっても相続税を払えなくなってしまうので注意が必要です。特に、遺産の大半が不動産の場合、相続人たちが相続税を払えずに困ってしまうリスクが高いので、生前に納税資金対策を含めた相続対策をしておくべきでしょう。

 

また、高額な相続税が発生しても、時間をかければ納税資金の用意ができるケースもあるでしょう。たとえば、不動産を売却したり貯金を作ったりする方法が考えられます。ただし、相続税は「相続開始後10ヵ月以内」に支払わねばなりません。

 

Aさんも売却を検討しましたが、期限までに売却できる見込みがなかったため、借り入れを利用することとなりました。

 

それでは、Aさんのように「相続税を払えない状況」に陥らないためにはどうすればよかったのでしょうか。

 

Aさんのような事態に陥らないためには「生命保険」の活用を

納税資金対策として、生命保険を活用することも有効です。

 

父親が現預金を使って終身などの生命保険に加入し、受取人を子どもにしておけば、父親が死亡した際に即座に現預金が入ってきて、納税資金に充てることができます。また、死亡保険金には相続税の非課税枠がありますから、銀行に預けているお金を生命保険に変えるだけでも節税対策になります。

 

Aさん一家のように遺産のほとんどが不動産となる場合は、事前に相続税がどれくらいになるか税理士に相談しておくことをおすすめします。

 

特に、不動産を相続される予定の方は納税額が高額になることが多いため、あらかじめ納税資金としてどれくらいを確保する必要があるか、専門家に相談しておくといいでしょう。

 

 

清水 豊

FP Office株式会社

ファイナンシャル・プランナー

 

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