がんで地主の父親が逝去…遺産分配で“ニンマリ”のAさん
都内に住む、現在55歳のAさん。Aさんの家はいわゆる地主の家系で、近所でも有名な大きなお屋敷に両親と3人で住んでいました。もともと先祖代々農家でしたが、宅地開発の流れもあり、Aさんの父親の代から離農。複数のアパートを建て、その後は年金と不動産収入で生計を立てていました。
Aさんには2人の姉がいましたが、それぞれ結婚を機に家を離れたため、「この家やあのアパートは、ゆくゆく長男である自分が相続するものだ」と思い込んでいたAさん。そのため、あまり仕事に身が入らず、就職しては数年で退職を繰り返していました。前の職場を辞めてからはもう数年が経ち、家でだらだらする日々が続いています。
そんな息子に対し、毎日のように「もう大人なんだから甘えるのはやめなさい。いつまでも遊んでなんかいないで、早く腰を据えて働くように」と口酸っぱく言っていた父親でしたが、このたび末期がんであることが発覚。数ヵ月後、あっという間に亡くなってしまいました。
なんとか葬儀を済ませ、次は相続手続きだというとき、父親が遺言を預けていた信託銀行から遺言執行者の就任通知が届きました。
相続人一同が銀行の応接室に招かれ、遺言の中身を確認。すると、「現預金は母親と2人の姉に、実家とアパートはAに相続させる」といった旨の記述がありました。また、Aさんは死亡保険金の受取人にもなっており、1,000万円を受け取ることになっていました。
予想どおり不動産を相続できることになったうえ、死亡保険金まで受け取れることになったAさんは思わずニンマリ。他の相続人全員も遺言の内容どおりに相続することに快く承諾し、相続登記などの手続きが始まりました。
“遺産で一生安泰”のはずが…
相続税の計算については、従来父親の確定申告をお任せしていた税理士にお願いすることに。税額計算の報告を待つあいだに相続登記を終え、相続開始の翌月からAさんにアパート収入が入ってくる手筈となりました。
しかし、Aさんが通帳記帳をしてみたところ、思っていたより入金額がありません。「なにかの間違いではないか」と銀行に問い合わせたところ、父親がアパートを建てたときの借り入れの返済が残っており、その返済のためにアパート収入のほとんどが消えてしまうことが判明しました。
さらに、衝撃の事実が発覚します。相続税の計算が終わった税理士から、次のようなことを言われたのです。
「お父様の遺産のうち、8割近くが不動産となっています。そのため、これを相続したAさんは約3,000万円の相続税を納める必要があります」
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