厚生労働省が毎年発表する「次年度年金額改定」
厚生労働省では毎年、次年度の年金額改定についてお知らせがあります。2023年度の厚生年金保険は夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額は22万4,482円でした。
この金額は平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)43万9,000円)で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額)※)の給付水準です。
※ 厚生労働省Press Release「令和5年度の年金額改定についてお知らせします」
厚生労働省のモデルケースでは、配偶者は老齢基礎年金のみであることがわかります。金融庁が2019年6月に発表された「金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書」をきっかけで老後2,000万円問題が話題になりました。この問題もモデルケースがもとになっています。
今回、Sさん夫婦は共働きのため、2人分の上乗せ部分の老齢厚生年金があります。そのため2人の年金を合わせると日常生活するには十分な金額を受け取ることができるはずでした。にもかかわらず、このままでは老後破産に陥ることに……。一体なにがあったのでしょうか。
年金400万円受け取れるSさん夫婦
現役時代に共働きだったSさん夫婦は現在64歳。お互い大学卒業後、一般企業で60歳まで仕事を続けたため、直近のねんきん定期便の見込額では、夫婦が65歳から受け取れる年金額は約400万円、月額は約33万円※です。
※ 老齢基礎年金は2023年度新規裁定者の満額。老齢厚生年金は差額加算を考慮せず。Tさんの平均標準報酬月額は53万円、450月、妻の平均標準報酬月額は44万円、480月で計算。
結婚当初から、お互いの給与は過度に干渉することなく、共有している日常生活費と家賃をひとつの金融機関口座にお互いが20万円ずつ振り込み、光熱費等を支払うようにしてきました。Sさんの自宅マンションは都内の通勤に便利なところにあり、家賃は20万円です。
総務省統計局の全国家計構造調査(2019年)二人以上の世帯で勤労者世帯の実収入及び消費支出(二人以上の世帯)では、世帯主の平均年齢49.2歳、平均世帯人員3.17人、実収入53万1,382円、勤め先収入46万8,937円とした場合、月約30万円かかっています。
仮に、現役世代と同じようにSさん夫婦が出費していたらどうなるのでしょうか? 年金額で日常生活費を現役世代と同様に出費した場合、2人の年金で日常生活費は賄うことができますが、希望するゆとりある生活ができるかどうかわかりません。なぜなら、Sさん夫婦は共有費以外の給与をお互いがなにに使っているか、まったく理解していなかったのです。
2人とも仕事柄、夫はゴルフや飲み会など、妻は化粧品、バックや洋服などブランド品の購入等に使っていたため、お互い貯蓄が年収のわりには少ないようです。
お互いがなににどのくらい使っているのかわからない夫婦は、所得があったとしても相手が貯めているだろう……と考えるため、案外貯まっていないケースが多いのです。
金融広報委員会の2021年家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査]において、就業者数別、金融保有資産額では、世帯主のみ就業、配偶者のみ就業、世帯主と配偶者のみ就業で比較すると平均額は、1,567万円、1,743万円、1,360万円と2人で働いているから資産額が多いというわけではないことがわかります。
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