フィリピン経済:23年4-6月期の成長率は前年同期比4.3%増~物価高と金利上昇による消費の鈍化で景気減速

フィリピン経済:23年4-6月期の成長率は前年同期比4.3%増~物価高と金利上昇による消費の鈍化で景気減速
(写真はイメージです/PIXTA)

23年4-6月のフィリピンのGDP成長率は、内需の鈍化が響き、市場予想を大きく下回る前年同期4.3%増にとどまりました。本稿ではニッセイ基礎研究所の斉藤誠氏が、フィリピン経済の直近の動向を振り返りつつ、先行きについて解説します。

4-6月期のGDPの評価と先行きのポイント

フィリピン経済はコロナ禍からの経済活動の正常化により、2022年は実質GDPが前年比+7.6%(2021年:同+5.7%)と上昇するなど好調だったが、今回発表されたGDP統計は2023年4-6月期の成長率が前年同期比+4.3%(前期:同+6.4%)と低下し、過去2年間の+6%以上の高成長から鈍化した。
 

4-6月期の景気減速は内需が鈍化した影響が大きい。GDPの約7割を占める民間消費は前年同期比+5.5%(前期:同+6.4%)と鈍化した。

 

フィリピンは足元でインフレが鈍化傾向にあるものの、食品価格の高騰やペソ安に伴う輸入インフレなどにより4-6月期の消費者物価上昇率は前年同期比+6.0%と高水準で推移しており(図表3)、また昨年5月からフィリピン中銀が実施した金融引き締めにより累計利上げ幅は+4.25%に達している。

 

こうした物価高と金利上昇が内需の下押し要因となると共に、前年同月の大統領選挙実施の反動減やリベンジ消費の一巡も支出の鈍化に繋がったものとみられる。

 

もっともフィリピンは昨年からの一連のコロナ規制の緩和により観光関連産業を中心に雇用情勢が改善して6月の失業率は4.5%と、前年同月の6.0%から低下しており、またペソ安を背景に海外就労者の送金額(ペソベース)が4-5月平均で同+9.9%と高水準だったため、消費は大幅な減速を免れた。

 

このほか、投資の鈍化(前年同期比+3.9%)や政府支出の縮小(同▲7.1%)も成長の押し下げ要因となった。
 

一方、純輸出は改善した。財貨輸出(同▲0.9%)は海外経済の減速を背景に電子部品(同+2.1%)や農産品(同▲25.1%)など主要輸出品の出荷が低調だったが、輸出全体の4割を占めるサービス輸出(同+9.6%)が好調を維持した。

 

フィリピンは昨年2月以降、入国規制を段階的に緩和しており、インバウンド需要がサービス輸出を押し上げている。4-6月期の外国人観光客数は130万人となり、コロナ禍前の6割強の水準まで回復している(図表4)。

 

 

フィリピン経済は4-6月期の成長率が低下したことで今年の政府の成長目標(+6.0~7.0%)の達成は難しくなった。当面は輸出停滞により昨年ほどの高成長は望めない。

 

インフレ率は年内に中銀の物価目標圏内(+2~4%)に沈静化し、今年7月のマニラ首都圏の最低賃金引き上げ(上昇率+7.1%)も民間消費の追い風になるだろうが、7月の大型台風とエルニーニョ現象の悪影響により食品価格が高騰する可能性もあり、年内は高金利が維持されるものと予想される。

 

もっとも政府は外国人観光客数が今年480万人(昨年265万人)に達すると予測しており、観光業関連産業の回復により雇用情勢の安定が続くとみられるため、内需を中心とした底堅い成長は続きそうだ。

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年8月10日に公開したレポートを転載したものです。

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