米ドル買い・円売りにも徐々に「行き過ぎ」懸念か
以上から考えると、今週も米景気や中国経済の動向に注目が集まりそうです。また、今週後半には毎年恒例のジャクソンホール会議が開かれます。25日にはパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の講演も予定されており、今週最大のイベントとして位置づけられています。
では、そういったなかで、米景気の好調を受けた米ドル買い、中国経済への不安に伴う円売りはまだ続くのでしょうか。これはどうやら、米ドル買い・円売りにも徐々に「行き過ぎ」懸念が再燃する兆しがありそうです。
ヘッジファンド取引を反映しているとされるCFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円ポジションは、売り越し(米ドル買い越し)が一時12万枚近くまで拡大したところは下回っているものの、先週にかけて8万枚以上に再拡大となりました(図表5参照)。経験的な円の「売られ過ぎ」の目安は10万枚程度なので、徐々にそれに迫ってきたわけです。
一方で、いまだ米ドル/円の短期的な「上がり過ぎ」はそれほど懸念される状況にはなさそうです。90日MA(移動平均線)かい離率は10%に迫ると短期的な「上がり過ぎ」懸念が強まりますが、これまでのところ同かい離率は5%をわずかに超えた程度の拡大までにとどまっています(図表6参照)。
ただし145円以上の水準は、米ドル/円の過去5年の平均値である5年MAを25%程度上回る計算になります。これは、米ドル高・円安は循環的にはすでに限界圏にあり、その意味ではいつ終わってもおかしくない状況が続いている可能性を示しています(図表7参照)。
以上をまとめると、米ドル/円は米景気や中国経済などの動向しだいで、短期的な「上がり過ぎ」を拡大する余地はあるものの、循環的には米ドル高・円安の限界圏にあることから、いつそれが終わり、反転してもおかしくない状況にあります。
こういったことを踏まえ、引き続き日本の通貨当局による円安阻止介入の可能性などもにらみつつ、今週の米ドル/円は米ドル高値圏での波乱含みの展開を予想します。予想レンジは142~148円です。
吉田 恒
マネックス証券
チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長
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