離婚による「マイホームの財産分与」…相場より〈500万円以上〉高い売値を主張し、売却を先延ばしにする妻のねらいとは?【離婚×不動産売却の専門家が解説】

離婚による「マイホームの財産分与」…相場より〈500万円以上〉高い売値を主張し、売却を先延ばしにする妻のねらいとは?【離婚×不動産売却の専門家が解説】

今回の相談者は妻子と別居中だという40代の夫。夫は早期にマイホームを売却して財産分与を進めたいと考えていますが、妻は夫側が提示した査定価格が相場よりも「500万円以上安い」と主張し、なかなか売却が成立しません。妻側はどんなねらいをもって、法外に高い売却価格を提示してきたのでしょうか。株式会社JKASの「離婚とおうちで困ったときのあなたの街の相談窓口」代表を務める石田栄一氏が解説します。

マイホームを売却し、財産分与を進めたい夫

夢のマイホームを手に入れ、幸せに暮らしているようにみえる家族。しかし、人生はときに予測不能な道を辿ることがあります。今回のケースは、まさにそんな一例でした。

 

筆者が本件に関与するようになったのは、夫・石井義之さん(仮名)側の弁護士からの「マイホームの売却査定をしたい」という依頼がきっかけでした。

 

舞台は東京都品川区にあるファミリータイプのマンション。専用庭があって子供が遊ぶのにちょうど良い1階の部屋は、新築時に夫妻で夢を膨らませて購入した部屋でした。

 

築年数はまだ15年ほどで綺麗ですが、部屋にはどこか殺伐とした雰囲気が漂っています。

 

現在この3LDKの部屋に住んでいるのは、物件の名義人である義之さんのみ。妻・美香さん(仮名)と高校生の娘、中学生の息子の姿はありません。義之さんは玄関横の洋室とリビングしか使用しておらず、洗濯物は乱雑に干されていました。

 

夫妻で口論が続いたある日、美香さんと2人の子どもたちは突然出ていってしまったといいます。1ヵ月ほどして美香さん側の弁護士から連絡があり、対抗する形で義之さんも弁護士に相談したとのことでした。

 

義之さんは、妻子が戻ってこないのであれば、早く売却して1人で部屋を借りてしまいたいと話しています。

 

査定を行うにあたり、筆者は近隣物件の価格動向や過去の事例などを基に石井夫妻の家の適正価格を導き出しました。購入時に頭金を多く入れていたこともあり、売却しても住宅ローン返済は問題なく、手元にはお金が1,000万円以上残る計算でした。

 

このお金は財産分与の対象となるため、名義人である義之さんだけの意見で売却することはできません。美香さん側の弁護士も、すでに分与できる財産の算定に入っています。

 

「少しでも高く売りたい」という売主の心理は理解しているつもりです。筆者は頑張ればなんとか売れるだろうという高めの査定を提案しました。

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