「銀行が高く評価する物件」は価値の高い物件といえるのか?…不動産営業マンの“巧みなセールストーク”に潜む落とし穴【不動産投資のプロが解説】

「銀行が高く評価する物件」は価値の高い物件といえるのか?…不動産営業マンの“巧みなセールストーク”に潜む落とし穴【不動産投資のプロが解説】

投資用の物件を選択する際、不動産営業マンから「銀行からの評価が高い物件ですよ」と聞くと、「市場価格が高い良物件だ」と思ってしまいがちですが、実態は大きく異なります。本稿では、株式会社JKASの「不動産投資に困ったときのあなたの街の相談窓口」代表を務める中村悠樹氏が、銀行が物件のどこをみているのかについて解説します。

銀行の目的は、貸したお金に利子をつけて返済してもらうこと

不動産投資家に融資を行う銀行は、融資の可否を判断するにあたり、投資家自身を審査するだけでなく投資対象となる物件についても評価を行っています。

 

それでは、銀行はどんなポイントを重視して物件をみているのでしょうか。

 

まず大原則ですが、銀行は融資(お金を貸す)をしますが、顧客から利子をつけて返済してもらうことで利益を得ています。つまり貸すことが目的なのではなく、利子をつけて返済してもらうことが目的です。

 

銀行内部では、銀行員達は融資の目標を会社から迫られ「借りてほしい。審査を通してほしい」と日々走り回っているため、つい融資を出すこと自体が目的なんだと、勘違いをしてしまうかもしれません。しかし本来の原理原則でいえば、銀行は融資をしてからが勝負。きっちりと回収しなければ商売は立ち行かないのです。

投資目的で不動産を購入する際の基準になる「建物の残存年数」

投資目的で不動産を購入する人への融資の可否を判断する場合、投資対象となる不動産が返済期間中、ちゃんと賃貸経営していける物件なのかどうかが重要なポイントになります。

 

そこで大きな基準の1つになるのが、建物の残存年数です。

 

一般的に木造は24年間、軽量鉄骨造27年、重量鉄骨造は34年、鉄筋コンクリート造47年となっています。日本では「建物に寿命がある」という考え方をします。もちろんどの国のどんな物にも寿命はあるのですが、日本はそれが顕著な国だという前提を持っておくといいかもしれません。

 

海外先進国のなかには、建物が古ければ古いほど物件価値が上がっていくような国もあります。しかし、日本では建物には寿命があり、寿命がくれば建物は無価値になるという文化が強烈に根付いているのです。海外の先進国に比べても日本の建築技術は高く、倒壊のリスクが低いにも関わらず、です。

 

よく手入れがされ、伝統あるデザイン、一流デザイナーの作った美しいデザインの建築物には古くても価値があるはずですが、そのあたりは銀行の評価にはまったく関係がありません。さらに、このデザインについては、一般市場の価格にも反映されていないのが実情です。

 

筆者としてはこれが、日本の建築物のデザインや間取りが一向に進化せず、不動産業界・建築業界の技術が停滞している大きな原因ではないかと考えています。心地良い生活に、美しいデザインは欠かせません。その建物のデザイン性が、現在の基準ではほぼ評価されないのは大きな問題だといえそうです。

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