地代が欲しい「地主」と生活するだけで手一杯の「建物所有者」
地主である不動産業者から筆者へ、「うちが所有している土地の上に建つ古い借家を買ってもらえないか?」と相談がありました。
所有者の山本さん(仮名)は、親からの相続で建物を取得したのですが、① 自分が住むことのない土地の地代を毎月払い続けるか? ② 建物を解体して更地にして地主に土地を明け渡すか? という2択を迫られていました。
しかしながら、山本さんは毎月の家賃の支払いにも苦しんでいる状況で、解体費用170万円の負担もできません。
地主は地主で、①更地で返されても地代が入らない、②解体せずにそのままの状態で地代の滞納が発生する可能性があるといった今後想定される八方塞がりの状況に困り果てている様子でした。
立地は良好だが…5年以上放置された空き家の内部はボロボロ
早速、法務局の建物登記簿謄本を調べてみたところ、
建築年月日 不詳
木造平屋建て
昭和38年ごろに2階を増築
といった記録はありましたが、詳細は不明でした。建築指導課で過去の建築確認申請書の書類請求をしてみても、建築確認の検査済証などはありません。
資料では建物の詳細な状態がわからないので、筆者は現地を訪れてみることに。
建物内部は5年以上空き家のままだったようで、残置物やゴミなどが天井近くまで積み上がり、足の踏み場もない状態でした。これらを片付けない限り、間取りの確認もできそうにありません。
見上げた天井には雨漏りの跡があり、床は腐ってベコベコ。いまにも抜けそうな箇所も多く、さらにはなんだか傾いているところも……。土地の周辺を調べてみると、さらに厄介なことが判明しました。
この建物は前面道路まで2軒で共同利用している通路の奥にあるのですが、幅員1.5mしかない通路は「建築基準法第42条の道路」に該当しないため再建築ができず、また通路を広げることもできません。
土地は借地権で地主さんに毎月地代を支払う必要があり、融資や住宅ローンが組めるような銀行は皆無。担保評価もまったくなく、普通の不動産業者は手を出さない物件です。
唯一の利点は、その地域の繁華街が徒歩圏内にあることです。周辺の環境だけを考慮すれば、立地は良好なのです。
そこで筆者は、地主の不動産業者と建物所有者の山本さんに現状の説明を行いました。
山本さんは、現状のままで時間が経過しても買主がみつかる可能性が低いことに加えて、発生し続ける地代の負担から逃れたいという希望もあり、筆者が100万円で建物を取得することになりました。
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