写真:PIXTA

一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティングのエグゼクティブディレクターの家村均氏が、フィリピンの現況を解説するフィリピンレポート。今週は格付機関によるフィリピン経済見通しと、同国の経済成長を支えるBPO産業が抱える課題について解説します。

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フィリピン経済を支えるBPO産業…AI技術の成長でピンチに⁉

フィリピンは、約3000億ドル規模のグローバルなビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)市場でのシェアを守るために競争を繰り広げており、高度人材の不足と急速に進化する人工知能(AI)からの競争に直面しています。

 

世界で2番目に大きなアウトソーシングサービス提供国であるフィリピンは、必要なコミュニケーションと技術スキルを持つ人材比率が低下しているため、今後5年間で80万の雇用機会を逃す可能性があると警笛が鳴らされています。フィリピンは、国内総生産(GDP)の約8%を占めるこの産業での優位性を失うリスクがあり、他の新興国がシェアを狙う中で激化する競争に直面しているのです。

 

また、COVID-19パンデミック以降、AIを搭載したボットによってアウトソーシングの仕事が相当程度奪われているという現実もあります。英語の話せる人材が多いというフィリピンの強みは、1990年代のBPO産業の登場以来、コールセンター大国としての台頭を支え、中間層の拡大に寄与してきました。しかし、その優位性が弱まっており、世界銀行のデータによれば、10歳までに簡単なテキストを理解して読むことができないフィリピンの子供は10人中9人に上るとされています。

 

さらにフィリピンは、プログラミングやトラブルシューティングといった情報技術スキルにも不足しており、最新のBPO業界の要求に対応仕切れていないとされています。パンデミックの間、フィリピンのアウトソーシング業界は25.5万の追加雇用を作りましたが、世界全体のBPO産業の成長率からは1%程度低い成長となりました。これは、インドや南アフリカ、エジプト、ポーランド、コロンビア、コスタリカなどの新興国にシェアを取られている可能性があります。

 

課題の一部は、雇用可能性の低さです。業界団体によると、アウトソーシングの求人に対して10人中1人しか雇用されていないとされています。技能レベルのキャッチアップは、人工知能が世界中の産業に影響を与える可能性があるため、ますます緊急の問題となっているのです。

 

アジア開発銀行によると、AIは2030年までにフィリピンのアウトソーシング産業の約4分の1の人々の仕事を置き換える可能性があるとしています。つまり、BPOの従事者は新しい技術を効率的に使用する方法を学ぶ必要があります。そして、業界団体は「準備するための時間はあるが、時間は短くなっている」としています。

 

これらの課題にもかかわらず、業界団体は、2022年のBPO雇用者数157万人から2023年には6%〜7%の増加を見込んでおり、売上も7%〜8%成長し、約350億ドルになると予想しています。またフィリピンの高等教育委員会と連携し、IT教育プログラムを現在のトレンドに合わせて再構築し、BPO産業での能力を開発する取り組みを行っているとしてます。

 

BPO産業は、2028年までに110万人の新たな雇用を創出し、250万人の従業員を持つ590億ドルの産業となる計画を立てています。同産業はGDPへの貢献をほぼ9%に増やすことを目指しており、欧州でのシェア拡大を狙っています。

 

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※当記事は、情報提供を目的として、一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティングが作成したものです。特定の株式の売買を推奨・勧誘するものではありません。
※当記事に基づいて取られた投資行動の結果については、一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティング、幻冬舎グループは責任を負いません。
※当記事の比較するターゲット株価は、過去あるいは業界のバリュエーション、ディスカウントキャッシュフローなどを組み合わせてABキャピタル証券のプロアナリストが算出した株価を参考にしています。

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