(※写真はイメージです/PIXTA)

名誉毀損とは、相手の社会的評価を下げる事実を適示することなどです。最近では、インターネット上での名誉毀損や誹謗中傷が、社会問題となっています。では、職場での悪口などであっても、名誉毀損罪は成立するのでしょうか? 本記事では、職場での悪口や職場である会社の悪口などと名誉毀損について、Authense法律事務所の弁護士が詳しく解説します。

名誉毀損に対してとれる法的手段

職場で名誉毀損の被害にあった場合、どのような法的手段が検討できるのでしょうか?

 

名誉毀損への法的手段としては、「刑事」と「民事」の2つがあります。そして、これら両方の責任を追及する場合もあれば、いずれか一方の責任のみを追及する場合もあります。これは、被害者の希望や行われた名誉毀損の内容などによって決めていくことになりますので、弁護士と相談したうえで検討するとよいでしょう。

 

それぞれの法的措置の概要は次のとおりです。

 

1.刑法上の罪に問う(刑事)

名誉毀損への法的措置の1つ目は、刑事上の責任を問うことです。こちらの最終的なゴールは、相手の行為について警察や検察に捜査してもらい、相手を罪に問うことにあります。

 

名誉毀損に関する罪には、「名誉毀損罪」があり、それに似た罪としては「侮辱罪」が存在しますが、いずれも親告罪とされています(同法232条)。親告罪とは、被害者側からの告訴がない限り、検察が独自に起訴することができない罪です。そのため、名誉毀損罪や侮辱罪で相手を有罪にしたい場合には、まず被害者側が告訴をしなければなりません。

 

一般的に、告訴は警察に対して告訴状を提出する形で行われます。その後、警察が事件の捜査をして、検察に送致されます。この際、逃亡の恐れなどがあると判断されれば身柄の拘束(逮捕)がされることもありますが、逮捕されずに在宅のまま捜査が進むことが多いです。

 

検察に送致がされると、検察官が取り調べなどをしたうえで、起訴するか不起訴とするかを決定します。不起訴となればそこで事件が終了する一方で、起訴されれば刑事裁判が開始されます。なお、略式起訴の場合には公判は開かれません。この刑事裁判で有罪か無罪かが決定されます。

 

名誉毀損罪と侮辱罪の概要は、それぞれ次のとおりです。

 

■名誉毀損罪

名誉毀損罪とは、「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者」が該当する罪です(同法230条)。これに該当した場合には、3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金に処される可能性があります。

 

名誉毀損罪の成立要件については、後ほどくわしく解説します。

 

■侮辱罪

侮辱罪とは、「事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者」が該当する罪です(同法231条)。名誉毀損罪とは異なり、「事実の摘示」は要件とされていません。そのため、抽象的な悪口の場合には名誉毀損罪には該当しない一方で、侮辱罪に該当する可能性があります。

 

これに該当した者は、次のいずれかの刑罰に処される可能性があります。

 

・1年以下の懲役
・1年以下の禁錮
・30万円以下の罰金
・拘留
・科料

 

なお、侮辱罪の以前の刑罰は「拘留又は科料」のみであったところ、令和4年(2022年)7月7日より厳罰化されました。

 

2.損害賠償請求をする(民事)

名誉毀損へのもう1つの法的措置は、民事上の責任を追及して損害賠償請求をすることです。損害賠償請求とは、相手の行為によって生じた損害を、金銭で賠償してもらうための請求です。こちらのゴールは、相手方に相当の金銭を支払わせることにあります。

 

なお、損害賠償請求はあくまでも民事上の手続であり、損害賠償請求が認められたからといって、相手の刑事責任も当然に認められるわけではありません。

 

職場での名誉毀損に対して損害賠償請求をする際には、まず相手に対して直接損害賠償請求をすることとなるでしょう。なお、多くの場合そうではありませんが、その態様等によっては会社を訴えるということもあり得ます。弁護士へ依頼した場合には、弁護士から内容証明郵便を送るなどして請求することが一般的です。相手が任意での支払いに応じない場合には、裁判を提起することとなります。

 

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