パワーカップル世帯の動向(2)生活基盤の状況-小学生の子を持つ30・40代、DINKS40・50代、大企業勤務夫婦、4割が金融資産4千万円以上

パワーカップル世帯の動向(2)生活基盤の状況-小学生の子を持つ30・40代、DINKS40・50代、大企業勤務夫婦、4割が金融資産4千万円以上
(写真はイメージです/PIXTA)

パワーカップルをめざす場合、女性が出産・子育て期を経ても正規雇用の仕事を続けられるような環境整備が課題になりますが、これは将来世代の就業環境の改善を図る上での課題とも重なります。本稿ではニッセイ基礎研究所の久我尚子氏が、パワーカップル世帯の就業状況や金融資産の状況、居住形態などの動向について解説します。

2本人や配偶者の仕事~大企業勤務の正規雇用者夫婦が半数以上、妻が公務員や役員も1割程度
本人の職業については、全体で最多はパート・アルバイト(44.7%)で、次いで正規雇用者(32.2%)が続き、両者で約8割を占める(図表5(a))。

 

妻が高年収であるほど正規雇用者や役員が増える傾向があり、妻の年収700万円以上(かつ世帯年収1,000万円以上)では圧倒的に正規雇用者(64.2%で全体より+19.5%pt)が多く、次いで公務員(13.2%で同+9.5%pt)、役員(9.4%で同+7.7%pt)と自営業・自由業(9.4%で同+0.8%pt)が続く。

 

つまり、パワーカップルの妻は約8割が正規雇用者、約1割が役員ということになる(本稿では夫婦ともに年収700万円以上との従来の定義と比べてやや幅広な範囲で見ているために実際にはもう少し多いことが予想される)。

 

なお、自営業・自由業とパート・アルバイト以外に対して、勤務先の従業員規模をたずねたところ、全体で最多は100人未満(35.9%)で、次いで100人~1,000人未満(35.1%)、1,000人以上(29.0%)と続き、従業員規模が小さいほど多い傾向があるが、おおむね3分の1ずつを占める(図表5(b))。

 

一方、妻の年収700万円以上(かつ世帯年収1,000万円以上)では、逆に規模が大きいほど多い傾向があり、過半数が1,000人以上(53.7%で全体より+24.7%pt)で、次いで100人以上~1,000人未満(34.1%で▲1.0%pt)、100人未満(12.2%で同▲23.7%pt)と続く。

 

つまり、パワーカップルの妻は一般的な共働き世帯と比べて従業員規模の大きな組織で働いている傾向が強く、半数以上は従業員規模1,000人以上の組織に勤務している。

 

 

 

配偶者の職業については、妻とは異なり、全体では圧倒的に正規雇用者(62.6%)が多く、次いで自営業・自由業(11.8%)が続く(図表6(a))。一方、妻の年収700万円以上(かつ世帯年収1,000万円以上)では、妻と同様、全体と比べて正規雇用者(71.7%で全体より+9.1%pt)や役員(15.1%)で全体5.4%より+9.7%pt)が多い傾向がある。

 

なお、当該層では公務員が0%となっているが、サンプル数が必ずしも多くないことも考慮すべきだろう。

 

また、配偶者の勤務先の従業員規模については、妻と同様、全体ではそれぞれの区分が約3分の1ずつを占めるが、妻の年収700万円以上(かつ世帯年収1,000万円以上)では規模が大きいほど多い傾向があり、約半数が1,000人以上(46.9%で全体32.3%より+14.6%pt)である。

 

つまり、パワーカップルの夫は約7割が正規雇用者、約15%が役員、そして、約半数が従業員規模1,000人以上の組織勤務ということになる(前述同様、実際はもう少し多い)。

 

また、パワーカップルの夫婦を比べると、妻の方が職業は公務員や自営業・自由業が多く、従業員規模の大きな組織で勤務している傾向があり、雇用環境の安定性や働き方の柔軟性を重視する妻が夫と比べると一定程度多い様子がうかがえる。

 

 

 

3居住形態~パワーカップルというより共働き世帯の特徴が色濃い、マンション居住と持ち家がやや多い


居住形態については、全体では約半数が持ち家(戸建て)(48.9%)で、次いで社宅・官舎(27.1%)、持ち家(集合住宅)(21.4%)と続く(図表7)。なお、集合住宅も含めた持ち家保有率は70.3%である。

 

妻の年収700万円以上(かつ世帯年収1,000万円以上)でも約半数が持ち家(戸建て)(47.2%で全体より▲1.7%pt)で、次いで社宅・官舎(26.4%で同▲0.7%pt)、持ち家(集合住宅)(24.5%で+3.1%pt)と続き、持ち家保有率は71.7%(同+1.4%pt)であり、全体と大きな違いはない。

 

つまり、パワーカップルは7割以上が持ち家に住み、(マンション住まいがやや多い様子がうかがえるものの)必ずしも一般的な共働き世帯と比べて目だった特徴があるわけではない。
 

 

 

この背景には、そもそも共働き世帯自体が、利便性重視志向の高さなどから居住形態に共通の特徴を持つことがあげられる。

 

専業主婦世帯や単身世帯を含む当調査の調査対象全体では、居住形態は持ち家(戸建て)(48.8%で共働き世帯より▲0.1%pt)、賃貸住宅(30.5%で同+3.4%pt)、持ち家(集合住宅)(18.2%で同▲3.2%pt)、社宅・官舎(2.5%で同▲0.1%pt)の順に多く、持ち家保有率は67.0%(同▲3.3%pt)で、共働き世帯は全体と比べて持ち家保有率がやや高く、マンション居住がやや多い傾向がある。

 

また、パワーカップルの持ち家率が共働き世帯の中で目立って高いわけではない背景には、前述の通り、比較的若い年代が多いことも影響しているのだろう。なお、持ち家保有率は、必ずしも妻の年収に比例して高まるわけではないため、年代やライフステージの影響の方が大きい様子がうかがえる。

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年7月27日に公開したレポートを転載したものです。

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