パワープレイの浸透策は厳禁
コロナショックにより、社会の前提が大きく崩れ去ったいま、多くの企業が自社のビジネスやブランドを再構築することを迫られており、それに伴って新たなビジョンやミッション、パーパスを定めて、組織そのものの在り方から見直す企業が増えています。具体的にいうと、正解のない世の中でめざす方向(=ビジョン)を見誤らず、自ら考え、自ら実行に移せる自律型人材・組織へと変革するというものです。
そうしたなかで、よく耳にするのが「新たにビジョンを定めたのはよいが、なかなか社員に浸透しない」という悩みの声です。こうした悩みを抱えた企業のほとんどが、定めた言葉を広告宣伝するように社内発信を行い、全社員に浸透させようとしています。
しかし、それを受け取る社員の気持ちになって考えてみると、いくら自分が勤める企業のビジョンとはいえ、新たに定めた価値観を、社員が突然耳にしただけでは、なかなか共感・共鳴は生まれにくいはずです。特に、人材の流動性が高くなったいまでは、無理やりに浸透させようとすることで、押しつけ感を感じた社員は他社へと流出してしまうリスクさえあり、諸刃の剣といえます。
しかし、少し視点を変えるだけで、「組織浸透、社員共感・共鳴」を一気に推進できることもあります。本記事では、企業が策定するビジョン・ミッションの社員共感や共鳴といった浸透施策について、紐解いて参ります。
なぜ「新しい企業理念」が浸透しないのか?
そもそもこうした壁にぶつかるのは、ビジョンを“創る側”と“受け取る側”の「二極構造」が生まれてしまうことにあります。ビジョンを創り上げていく過程において、経営幹部や次世代リーダーをプロジェクトメンバーとして議論を重ねて、共通認識をつくり、言語化していくわけですが、ここに決定的な落とし穴があります。
プロジェクトメンバー間での議論が熟すにつれて、メンバー全員が違和感なく、共感できる言葉を熟考しすぎて、いつのタイミングからか“コトバ”づくりが目的あるいはゴールになってしまうのです。
ビジョンやミッションとして定める“コトバ”は、企業・組織のあるべき姿を明確に示し、その方向へ社員を動かすためにも、単語1つひとつを丁寧に選び、紡ぐべきであることはいうまでもありません。
しかし、真の目的は前述のとおり、自律型人材・組織をつくることです。そこからの逆算の一手としての新たなビジョン・ミッションの策定のはずが、この一手目に大きく力を使いすぎ、後半は発表して、社内報や掲示物で広めて、各チームのリーダーに任せようと、前半の熱量と比べると非常に低温な力の入れ具合になりがちです。
このような形で、ビジョン策定までと、それ以降で分断が生まれてしまうため、プロジェクトメンバー=創る側、プロジェクトメンバー以外の全社員=受け取る側という二極構造が無意識に生まれてしまうのです。
この構造のまま“コトバ”だけが広まったとしても、元々の課題であった自律型人材・組織ではなく、上からの指令を受け入れて動く人材・組織のままで、根っこの部分は決して変革できたとはいえません。
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