役職定年後、肩書がなくなった状態で働き続けるには…
前述した調査を踏まえると、高い役職の経験者ほど、役職定年後のギャップが心理的に受け入れにくいことが挙げられます。早いうちから、副業・兼業等を通じて、様々な立場を経験したり、習い事にチャレンジするなどしてフラットな人間関係を増やすことで、そのギャップに悩むことも少なくなると考えられます。
男性は女性に比べ、上下の人間関係ではなく、横のフラットな人間関係を築くことに強みを持ち、一見この点は問題にならないようにも思われます。しかし、管理職まで登用される女性の中には、男性が多い縦社会の中で評価されてきた女性が少なくありません。そのため、フラットな人間関係づくりを早いうちから意識を持って行っておくことが、男性同様に大切だと感じます。
また、「社員の補助・応援」の仕事ではモチベーションが下がり、「経営層・上司の相談・助言+所属部署の後輩社員の教育」の仕事では意欲が低下しづらいという結果を踏まえると、今までのキャリアに対するプライドもあるため、若い上司のもとで、一メンバーとして働く難しさも読み取れます。
実際、筆者自身もミドル・シニアの働き方について調査していく中で、高齢化するに従って、若手の教育係になりたがる人は多いと聞きます。しかし、組織側の事情を踏まえれば、すべての役職定年者をアドバイザー的な役割にするのは適正な配置といえません。労働人口が減り、現場の人手が足りなくなる可能性を考えれば、教育係ではなく、一緒に手を動かしてほしいというのが若手の本音でしょう。
役職定年を迎えた後、肩書がなくなった状態で組織や若手の事情と折合いをつけながら、働き続けるためには、専門性を高めることにとどまらず、年齢を経てもフラットな関係でいられるコミュニケーションの姿勢や、若手と一緒に汗をかいて仕事をし続ける努力が求められます。
小島 明子
日本総合研究所創発戦略センター
スペシャリスト