〈知らないと損〉親の介護は平均「5年間・総費用500万円」…仕事と両立するために利用できる「介護休業制度」とは【CFPが解説】

〈知らないと損〉親の介護は平均「5年間・総費用500万円」…仕事と両立するために利用できる「介護休業制度」とは【CFPが解説】

高齢化が進む現代社会では、親の介護を担う現役世代が増えています。心身に大きな負担がかかる介護と両立しながら働き続けるには、介護問題に直面する前に、あらかじめ支援制度やサービスについて知っておくことが重要です。本記事では、日本総合研究所創発戦略センタースペシャリストの小島明子氏による著書『女性と定年』(金融財政事情研究会)より、介護離職を防ぐために利用できる制度について解説します。

親の介護にかかる費用は「総額500万円」

40代、50代に差し掛かり、仕事をしていく上で突然直面する問題の1つに、親の介護が挙げられます。ダイヤ高齢社会研究財団※1によれば、親のいる50代の男性のうち、「現在介護をしている」「将来可能性がある」と回答した人が半数に上ることが示されています。

 

介護費用の負担においては、約4割の男性が「親の年金や資産で不足する分」を支出せざるを得ないと考えています。今まで介護費用の負担は男性が行うイメージでしたが、働く女性が親の介護の問題に直面するケースも増えると考えます。

 

生命保険文化センター※2によれば、介護を行った期間(現在介護を行っている人は、介護を始めてからの経過期間)は平均61.1ヵ月(5年1ヵ月)、介護に要した費用(公的介護保険サービスの自己負担費用を含む)は、月々平均8.3万円というデータもあります。

 

親に貯蓄などがなく、すべてを負担した場合、約500万円近くの金額が必要ということになります。そのような状況に直面する可能性のある人ほど、経済的な事情から、介護離職は避けなければいけません。

 

※1 ダイヤ高齢社会研究財団「50代・60代・70代の老後資金等に関する調査報告書」。

※2 https://www.jili.or.jp/lifeplan/lifesecurity/1116.html

介護離職防止のための「介護休業制度」

育児・介護休業法では、要介護状態(負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態)にある家族を介護する必要のある労働者のための休業制度が設けられています。

 

対象家族1人につき、通算93日まで取得が可能で、3回まで分割取得できます。介護休業期間中は、一定の条件を満たせば、雇用保険から介護給付を受けることができます。

 

給付額は、介護開始時賃金日額(原則として、介護休業開始前6ヵ月間の総支給額(保険料等が控除される前の額で賞与は除いた金額)を180で除した額)×支給日数(原則として30日、ただし、介護休業終了日を含む支給単位期間については、その介護休業終了日までの期間)に67%を掛け合わせた金額となります。

 

このほか、要介護状態にある対象家族の介護を行う労働者には、1年に5日(対象家族が2人以上の場合は10日)まで、介護を行うために、介護休暇制度の取得や、介護のための短時間勤務制度、所定外労働時間の制限が定められています。

 

40歳以上からは、介護保険料を支払わなければならないため、原則65歳以上の人(第1号被保険者)が原因を問わずに要介護認定または要支援認定を受けたときには、介護サービスを受けられます。第2号被保険者でも、加齢に伴う疾病(特定疾病)が原因で要介護認定、または要支援認定を受けたときには、介護サービスを受けられます。

 

要介護は1〜5の5段階、要支援は1〜2の2段階で、要介護認定・要支援認定ごとに、介護サービスを利用するための区分支給限度基準額が決められており、これらの1割もしくは2割(一定以上の所得がある場合)は自己負担、さらに限度額を超えた利用は全額自己負担となります。

 

介護保険サービスの対象にならないサービスもありますので、介護サービスの利用のために、お金の準備は必要だといえます。

 

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※本連載は、小島明子氏の著書『女性と定年』(金融財政事情研究会)より一部を抜粋・再編集したものです。

女性と定年

女性と定年

小島 明子

金融財政事情研究会

◆女性の「定年」に実践的なヒントを提供。 ◆日本では、今後、定年を迎える女性が増加。 ◆これから定年を迎える女性たちを取り巻く現状をデータにより分析。 ◆明るい定年後を送るため、今から定年を見据えたキャリアを考…

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