さまざまな時代の変遷を経験してきた「団塊の世代」
生徒:団塊の世代の方々も、2025年には75歳になると聞きました。いまは少子高齢化のうえインフレも進んでいますが、後期高齢者となる方々の老後はどうなっていくのでしょうか。
先生:今回は、団塊の世代の方々の意外な老後生活について、この世代が50代時点で描いていた理想像とともに紹介しましょう。団塊の世代とはどの世代のことを指すのか、具体的にわかりますか?
生徒:はい、団塊の世代とは1947年から1949年、戦後の第一次ベビーブームの時期に生まれた方々です。
先生:そうですね。団塊の世代は、ベビーブームにより人口が急増した戦後の高度経済成長に生まれ、昭和のバブル期を経験し、平成不況も経験した世代です。
生徒:団塊の世代の方々はさまざまな時代の変遷を経験されてきたんですね。
先生:そうです。ところで、2025年問題という言葉はご存知ですか?
生徒:わかりません…。どのような問題なのでしょうか?
先生:これは、2025年に多くの団塊の世代が75歳を迎えることにより、社会保障費の増大が懸念されるという問題です。超高齢化社会となり、社会保障制度の破綻が心配されているのです。
生徒:団塊の世代が医療や介護を必要とする立場になることで、社会保障制度に負担がかかるわけですね。
先生:その一方で、団塊の世代の初任給や平均年収なども興味深いといえます。例えば、団塊の世代の大卒の初任給は、現在の価値に換算すると14万円から16万円程度でした。それでもバブル景気の頃は、華やかな生活を送っていたようです。一部の歴史の教科書にも掲載されているとも聞きますが、1万円札をヒラヒラとさせてタクシーを止める姿は、いまや笑い話になっています。
生徒:当時の初任給は、現在の初任給よりもかなり低かったんですね。それでも華やかな生活を送れていたということは驚きです。
先生:その後、景気の波によって会社員の平均年収も上下しています。1990年には公定歩合の引き上げや湾岸戦争などにより株価が暴落し、会社員の平均年収も落ち込みました。現在の不況に至るまで緩やかな下落が続いています。
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老後資金を貯める段になって、初の「給与減」という状況に
生徒:景気の変動によって会社員の平均年収も上下するんですね。団塊の世代が後期高齢者となるこれから先、どのような生活が待っているのでしょうか。
先生:その前に、団塊の世代が50代で予想した老後の生活について説明しましょう。団塊の世代はバブル景気を経験し、収入が上昇し続けてきた世代ですが、いざ老後資金を貯めようとしたときには、初の給与減という状況に直面したのです。
生徒:それは厳しいですね!
先生:厚生労働省が行った調査によると、当時の50代の男性は、92%が収入を得る仕事をしていて、そのうちの55%が正規雇用の従業員、20%が自営業者、7%が会社役員として働いていました。また、勤続年数に関しては、30%の人がひとつの企業で20年以上勤務し、さらに16%が同じ分野の仕事に20年以上従事していました。つまり、団塊の世代の男性は、長期間同じ職場で働いてきたことが分かります。
生徒:団塊の世代の方々は、長い間ひとつの職場で働いたり、同じ仕事で経験を積んだりしてきたんですね。
先生:そうです。団塊の世代の人々が50代の頃にはイメージしていた60歳から64歳の定年直後は「仕事で収入を得る」と回答した人が66%でした。一方、65歳になって「公的年金を頼りたい」と考える人が69%と逆転していました。
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理想の老後は「年金暮らし」も、現実は多くが就労し…
生徒:団塊の世代の人々は「65歳以降は公的年金を頼る」と考える人が多かったんですね。
先生:その通りです。彼らが70~74歳になった現在の追跡調査では、約半数が「仕事をしている」と回答しているのです。正規雇用の従業員として働いている人は4%、パート・アルバイトとして働いている人が16%、自営業者は13.1%と、多く人たちが現役のままのようです。
生徒:そんなに大勢の人たちが働き続けているんですか。
先生:しかし、彼らが仕事に対して前向きかといえば、そうともいいきれません。「これから先も仕事を続けたいか」という質問に対して39%の人たちが「仕事をしたい」と回答しているものの、その理由の51%が「生活費を稼ぐために仕事をしなければならない」というものなのです。つまり、団塊の世代の多くの人たちが、年金だけで老後生活を送ることができない状況に陥っているといえるのです。
生徒:公的年金はどれくらいもらえるのでしょうか?
先生:厚生労働省によれば、70歳でもらえる平均的な厚生年金の金額は月額14万7000円です。これでは生活費が足りませんね。これが老後生活の現状だということを、これから後期高齢者となる団塊の世代の人たちは教えてくれているのだといえます。
生徒:なるほど…。老後に備えて資産運用を行うことが重要なんですね。将来のために早めに行動する必要がありますね。
岸田 康雄
国際公認投資アナリスト/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/公認会計士/税理士/中小企業診断士
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