(※画像はイメージです/PIXTA)

医学部に合格するにはどのような勉強をすればよいのでしょうか? 医学部医学科卒の綿谷もも氏は、苦手な科目はまずは「合格ライン」を目指す、それができたら「総合点を上げるために何をすると良いかを考える」という戦略こそ、最も効率的な総合点の上げ方であるといいます。綿谷氏が現役医大生時代に刊行した著書『医学部受験バイブル 現役医大生からの贈り物』(監修:高梨裕介氏)より一部を抜粋し、見ていきましょう。

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医学部受験は1分野でも「抜け」を作ってしまうと合格困難

全教科の基礎を習得する上で最も難しいところは、「医学部入試の膨大な試験範囲に対し、抜けをつくらず徹底的に習得する必要がある」という点です。

 

医学部の試験科目は、英語、数学ⅠA・ⅡB・Ⅲ、理科2科目、(国公立はプラスで国語・社会)と、大学受験ではトップレベルの試験範囲の広さです。

 

この膨大な試験範囲を全て習得するのは想像以上に難しく、多くの受験生が苦戦するところとなっています。

 

さらに、医学部受験は受験生全体のレベルが高いため、1つの科目どころか、1つの分野でも抜けを作ってしまうと合格は困難となる、という特徴があります。つまり、

 

●英語はよくできるが、数学が全然できない

●得意な数学は得点源になるけれど、嫌いな化学の暗記は抜けだらけ

●数ⅠA・ⅡBや英語の応用力はあるが、数Ⅲや理科の習得に穴がある

 

というように、科目や分野に抜けを作ってしまうのは絶対にNGなのです。

 

実際、医学部受験に失敗した原因をヒアリングしてみると、最も多い原因としては

 

●試験範囲が広く、全範囲の習得が間に合わなかった

●科目間のバランスを取って勉強できず、苦手科目を克服できていなかった

 

という2つが挙げられます。

 

「試験範囲が広すぎて習得が間に合わなかった」というのは、特に現役生にありがちな失敗例です。数ⅠA・ⅡBや英語の勉強に時間を使いすぎた結果、理科や数Ⅲの習得が不十分なまま受験に臨んでしまい浪人が決まる人は本当に多いです。また、学校の授業の進度が遅いために、出題範囲の習得が間に合わなかったという人もいます。

 

もう1つの「科目間のバランスを取って勉強できず、苦手科目を克服できていなかった」という例も非常によく見られます。受験生を見ていると、全科目バランスよく習得度を上げている受験生はむしろ珍しく、多くの人は科目間の成績に偏りがある印象です。

 

医学部受験対策を行う上で1番難しい点は、問題自体の難易度ではなく試験範囲の広さです。「全教科全範囲を抜けなく習得するためにはどうすればよいか」を最優先に考え、勉強の戦略を立てるとよいでしょう。

科目間の最適なバランスはひとりひとり違う

全科目バランスよく習得することは大切ですが、「科目のバランスをとって勉強する」とは、「各科目同じくらいの時間をかけて勉強する」という意味ではありません。

 

目標にすべきことは「最終的に科目ごとの完成度に偏りがないこと」です。人それぞれ得意な科目や苦手な科目は違うので、最適なバランスというのは人によって変わってきます。

 

理想としては、ひとりひとり違ったカリキュラムで科目ごとのバランスを取った勉強をするのが良いのですが、一般的にカリキュラムは固定されていることがほとんどです。「数学が得意で英語が苦手な人」と「数学が苦手で英語が得意な人」が同じ配分で勉強する訳ですから、なかなかバランスの偏りは解消されません。

 

また、教科ごとに先生が異なることも、教科ごとの配分の最適化が意識されにくい原因の一つであると考えています。

 

わたし自身の高校時代を振り返っても、数学の先生は数学の宿題を課し、英語の先生は英語の宿題を課し、化学の先生は化学の宿題を課し…と、それぞれの先生がそれぞれの宿題を目一杯出す形式でした。

 

得意な科目も苦手な科目も同じくらい勉強してしまうと、苦手科目に割く時間が十分に確保できず、苦手をいつまでも克服できない、という失敗に繋がります。

 

「科目間のバランスが取れているかどうか」は合否に大きく関わるため、自分の状況を客観的に分析し、科目の配分が最適となるよう学習を進めるとよいでしょう。

「特定の科目を極めて得点源にする」戦略はハイリスク

医学部受験は総合点勝負です。

 

よくない戦略としては、「特定の科目を極めることを目標にする」というものがあります。得意な科目の得点力を伸ばすという考えは一見良さそうにみえますが、合格可能性を考えると断然「総合点」を意識する戦略の方がおすすめです。

 

「数学が得意だから数学の難問演習に時間を割き、苦手な英語や化学は放ったらかし」という受験生を例に考えてみましょう。

 

数学の演習をどんどん進めて数学の実力を培うよりも、今まで放っておいた英語や化学の穴をなくす方がはるかに時間対効果が高く、合格可能性は上がります。

 

さらに、「特定の科目突き抜け型」には、合格可能性が安定しないというデメリットがあります。得点源にしたい科目の難易度を大幅に上げられた、もしくは周りと差がつかないほど易しくされてしまった場合、一気に合格可能性がなくなってしまうからですね。

 

特定の科目を伸ばして医学部に合格する人もいますが、かなりの少数派ですし、真似をするにはリスクが高すぎると言えるでしょう。

 

もう一点覚えておきたいこととして、「苦手な科目を得意科目に変える必要もない」という点があります。

 

例えば、もともと数学が苦手な場合、数学を得意としている人と張り合えるほど数学を伸ばすのは至難の業です。いくら時間をかけても、数学が得意な人と同じように得点できるようになるとは限りません。

 

数学で合格ラインを取れるようになったら、その後は理科や英語に力を入れた方が勉強した時間が得点に結びつきやすく、総合点を上げやすい可能性があります。

 

もちろん、数学の基礎ができていない状態では合格は難しいため、一定ラインの基礎力をつけることは大事です。しかし、一定ラインの基礎力をつけた後は、無理して深追いする必要もありません。

 

まとめると、苦手な科目はまずは「合格ライン」を目指す、それができたら「総合点を上げるために何をすると良いかを考える」という戦略こそ、最も効率的な総合点の上げ方と言えます。

 

 

【執筆】綿谷 もも

医学部医学科卒。数学が大の苦手で、高3の冬に受けた模試では偏差値39を取ってしまうほど。エースアカデミーで1年間浪人し、センター試験本番で90%以上を達成、関東の難関国立医学部、難関私立医学部に合格。

医学部入学後はエースアカデミーの医学生講師として6年間受験生を指導し300人以上の医学部合格に貢献。その経験をもとに、医学部在学中に書籍『医学部受験バイブル 現役医大生からの贈り物』を執筆、出版。将来の夢は小児科医。アイドルと猫が好き。

 

【監修】高梨 裕介

医学部予備校エースアカデミー 塾長、医師

医師/大阪医科大学卒、初期研修修了後に創業。

中学受験経験(灘、東大寺、洛南、洛星中学に合格)。

自身の医学部受験の反省を活かし、350名以上の医学部合格者を指導。医学部合格のためのよりよい指導をより安く提供することを理念としてエースアカデミーを設立。

※本連載は、綿谷もも著・高梨裕介監修の書籍『医学部受験バイブル 現役医大生からの贈り物』(幻冬舎ルネッサンス)より一部を抜粋し、記事化したものです。

医学部受験バイブル 現役医大生からの贈り物

医学部受験バイブル 現役医大生からの贈り物

綿谷 もも(著)
高梨 裕介(監)

幻冬舎メディアコンサルティング

【医学部に「最短距離」で合格する方法、教えます。】 現役医大生(※書籍刊行当時)の筆者が、自身の医学部受験経験、塾の講師として医学部受験生を指導してきた経験をふまえて、医学部受験に「本当に必要なこと」を徹底解…

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