ラブホテルの休憩料を“お布施”と偽り…税務調査で「14億円の所得隠し」がバレた宗教法人の末路【元マルサの僧侶が暴露】

ラブホテルの休憩料を“お布施”と偽り…税務調査で「14億円の所得隠し」がバレた宗教法人の末路【元マルサの僧侶が暴露】
(※写真はイメージです/PIXTA)

収益事業等以外は原則非課税の宗教法人。税法上「公益法人等」に分類されるためですが、なかにはこの制度を悪用し、多額の脱税を企てる宗教法人もあると、『税理士の坊さんが書いた宗教法人の税務と会計入門』(国書刊行会)著者の上田二郎氏はいいます。“元マルサの僧侶”という異色の経歴を持つ上田氏が、悪質な脱税がバレた宗教法人の末路を紹介します。

出入口に観音像…「ラブホテル経営」で14億円の所得隠し

長野など5県でラブホテルを実質的に経営している宗教法人が、関東信越国税局の税務調査を受け、08年2月期までの7年間で約14億円の所得隠しを指摘されていたことがわかった。

 

宿泊料の一部を非課税の「お布施」と偽っていたという。重加算税を含めた追徴税額は約3億円に上るとみられる。

 

関係者によると、同会は長野、群馬、新潟、岐阜、静岡の5県で23軒のラブホテルを実質的に経営。客から得た宿泊料や休憩料のうち約4割を「お布施」として売り上げから除外していたという。

 

このうち長野市内にあるホテルでは、出入り口に観音像が建ち、「宗教法人〇〇〇〇」という看板が掲げられている。さらに入り口左側には「喜捨をお願いします」「世界の恵まれない子供たちに手を差し伸べ、少しでも多くの幼い命を救うために」などと記されたプレートもある。

 

登記簿などによると、同会は83年設立。その後休眠状態となり、94年に長野県千曲市にある食品会社に買収された。

 

――脱税を指摘されたのは休眠状態だった宗教法人です。もちろん宗教法人に信者はいません。

 

休眠宗教法人は全国で5,000件もあるといわれています。報道によれば、香川県の本部に職員の姿はなく、活動実態はなかったようです。

 

しかし、宗教法人を所轄する県は、休眠状態の認識はなかったとし、宗教法人の売買については、宗教活動に関与できないので把握できないとしていました。

 

宗教法人は「信教の自由と政教分離の原則を最大限に保障しなければならない」と宗教法人法で手厚く保護されているため、解散などの制度はありますが、関係者の協力がないと解散手続きを取るのは難しいとの見解です。

 

そして、宗教法人の売買については、法の趣旨には反しますが、罰則規定はありません。そもそも、売買を想定していないとの理由からのようです。

 

報道記事から調査内容の詳細を知ることはできませんが、ホテルチェーンの土地、建物がすべて宗教法人所有だった場合、固定資産税は非課税になっていた可能性もあります。

 

宗教法人が本来の目的(宗教行事のため)で所有する建物、境内地は固定資産税が非課税扱いですが、ラブホテルが宗教法人の本来の目的に該当するはずはなく、固定資産税は非課税扱いとはならないはずです。

 

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次ページ問題は「固定資産税」にとどまらない…

※本連載は、上田二郎氏による著書『税理士の坊さんが書いた 宗教法人の税務と会計入門』(国書刊行会)より一部を抜粋・再編集したものです。

税理士の坊さんが書いた 宗教法人の税務と会計入門 第三版

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