●新年度入り後大幅高となった日経平均とTOPIXは足元で上昇一服、この先は企業業績に注目。
●4-6月期決算は総じて良好とみられ、控えめな今年度の業績予想を上方修正する企業もあろう。
●市場の業績予想は改善傾向、企業に業績予想上方修正の動きが広がれば株高基調は強固に。
新年度入り後大幅高となった日経平均とTOPIXは足元で上昇一服、この先は企業業績に注目
新年度入り後の日経平均株価と東証株価指数(TOPIX)の動きをみると、3月31日から6月30日までの期間、順に18.4%上昇、14.2%上昇となりました。いずれも大幅高となっていますが、特に日経平均の上昇幅は5月、6月とも2,000円以上となり、2ヵ月連続で2,000円以上となるのは、算出以来、初めてのことです。ただ、7月に入ると上昇は一服し、6月30日から7月25日まで日経平均は1.5%下落、TOPIXは0.1%下落しています。
さすがに5月、6月のような上昇ペースが続いてしまうと、相場の過熱感が高まり、調整時に大幅な株価の下落につながりかねないため、足元でみられるような上昇一服の動きは、むしろ健全なものと考えられます。改めて、ここからの株価の方向性は、企業の業績が重要なカギを握ると思われ、今週から本格化する3月期決算企業による4-6月期決算発表が注目されます。
4-6月期決算は総じて良好とみられ、控えめな今年度の業績予想を上方修正する企業もあろう
まず、2023年度の業績予想について、企業自身が公表している数字をみていきます。図表1は、TOPIXを構成する3月期決算企業(金融とソフトバンクグループを除く)を対象に、業績予想を公表している企業について、入手できるデータに基づき集計したものです(5月16日時点)。前年度比の売上高は2.5%増、営業利益は6.8%増、経常利益は2.6%減、純利益は5.1%減となっています。
このように、2023年度については、売上高と営業利益は1ケタ伸びる一方、経常利益と純利益は減益に転じるという、かなり控えめな企業自身の見方が確認されます。なお、4-6月期は、円安進行や供給制約の改善、インバウンド需要の回復など好材料も多く、総じて良好な決算が見込まれます。こうしたなか、2023年度の業績予想を上方修正する企業がどの程度みられるのかが、今回の決算発表における1つの注目ポイントと思われます。
市場の業績予想は改善傾向、企業に業績予想上方修正の動きが広がれば株高基調は強固に
次に、企業業績に対する市場の見方を確認します。図表2は、アナリストのTOPIX構成銘柄を対象とする業績予想の傾向を示す「リビジョン・インデックス」です。インデックスの上昇は、業績予想を上方修正した銘柄の割合が増えたことを示し、インデックスの低下は、下方修正した銘柄の割合が増えたことを示します。これをみると、直近では、上方修正の割合が増えつつある様子がうかがえます。
弊社は、金融とソフトバンクグループを除く408社の業績予想を作成していますが、2023年度の純利益は前年度比で1.7%増を見込んでいます(6月8日時点)。企業自身の予想と単純比較はできませんが、緩やかながらも増益傾向は続くと考えています。新年度入り後、やや期待先行で上昇してきた日経平均やTOPIXですが、この先、業績予想の上方修正の動きが企業に広がれば、株高の基調はより強いものになると思われます。
(2023年7月26日)
※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『【日本株】ここからの株価の方向性は「企業業績」に注目。国内企業の〈2023年度業績〉予想 ~市場の見方と企業の見方(ストラテジストが解説)』を参照)。
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト