この連載では、不動産を相続するにあたって、相続開始前に行うべき対策と、相続発生後にいかに対処するかなどについて解説します。初回は、相続発生前(5年前ぐらいのイメージ)の段階における、具体策について見ていきます。

まずやっておくべきは「底地の整理」

相続税対策を考えるとき、最初に相続財産の全体像を把握する必要があります。それにより、大雑把ながらも予想税額を求めることができます。そして金融資産や売却可能不動産との比較により納税資金が確保されているかをチェックしましょう。さらには概略の納税プランを考えてみます。

 

これらが大丈夫であれば、そうした相続財産を前提とする具体的な節税対策に入っていくことになります。

 

最もやっておかなければならないのは、底地の整理です。昔ながらの地主層は、借地人に貸した土地(つまり底地)を数多く所有しています。しかし今日では、借地権者の権利が強力に保護されているため、底地所有の魅力はまったくありません。何と言っても地代が論外の低さに抑えられています。

 

そのため、第三者にこれを売るにも、いわゆる底地買取専門事業者以外には誰も買う人がいません。そして、その価格はせいぜい更地価格の15%程度です。

 

それに対して底地の相続税評価は、更地価格の30〜40%です。したがって、物納がかなり困難となった今日では、底地を相続税財産として残してしまうと、時価よりずっと高い評価をされて、相続税が不必要に高くなってしまいます。

 

とはいえこの底地は、借地人との折衝で「借地権・底地」の関係を解消することができれば、更地価格の30〜50%程度の価値に戻すことができます。具体的には、底地の借地権者への売却、借地権者からの借地権の購入、両者共同による更地としての第三者への売却、さらには借地権と底地の一部交換による完全所有権化です。

 

ただし、こうした借地人との折衝をまとめていくには、かなりの期間(たとえば5〜20年)を要します。とりわけ折衝結果は、両者の力関係の影響を大きく受けます。相続発生等により急いで交渉をまとめようとすると、借地人に足元を見られたりします。

 

したがって、こうした底地の整理作業は、早いうちからのスタートが望まれます。つまり、財産を持っている本人が元気なうちからやっておかなければいけないというわけです。

相続が近づいたら「逆転物件」の調査を

次に、相続開始が近いと予想されるのであれば、相続税評価額が時価を上回る「逆転物件」の有無やその状況を調べておく必要があります。そしてそれがあるのであれば、その処理を検討すべきです(先述の底地はこの代表的なものです)。

 

本来は、時価を評価するのが相続税評価ですから「逆転物件」は発生しないはずです。しかし、評価規定は簡便なものにすぎないこと、何より評価規定の作成者が現実の不動産を知らないことなどにより、評価規定がかなり不出来にしかできていません。そのため「逆転物件」は少なくないのです。

 

「逆転物件」にはいろいろなものがあります。具体的には地形が劣悪な土地、後述するいわゆる再建築不可の土地、入居者の見込めなくなったアパート、無道路地、山、崖地、市場性のないリゾート地、境界が不明な土地、深刻な紛争が生じている土地等、枚挙に暇がありません。

 

世間ではこれらを指して「あの不動産は売れない」などと言います。しかし世の中には、崖地といった極端な例外を除き「売れない不動産」はありません。実は「地主さん、あなたの思っているような高値ではとうてい売れません」というのが事の真相です。

 

つまり、値をどんどん下げていけば必ず売れます。そして、その売れた値段こそがその不動産の「時価」なのです。

 

ところが相続税評価は、こうしたそれぞれの特殊事情という減価要素への認識がまったく不足しています。ですから、一般の不動産から少し下げた程度の評価にしかしません。これでは「逆転物件」が大量に出てしまうのも当然と言えるでしょう。

 

したがって、不動産を整理する場合は、「逆転」の幅の大きいものから「時価」で売ってしまうといいでしょう。本当に値がつかないのであれば、お土産をつけて誰かにあげてしまうのも手です。こうすればかなりの節税になるはずです。その上、誰も欲しがらない「貧乏神」のような不動産が処分できてしまいます。

本連載は、2014年2月27日刊行の書籍『相続税を減らす不動産相続の極意』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

相続税を減らす不動産相続の極意

相続税を減らす不動産相続の極意

森田 義男

幻冬舎メディアコンサルティング

相続税対策の成否は「土地の相続税評価をいかに行うか」にかかっています。 しかし、専門家であるはずの税理士や金融機関の担当者等が、まったくと言っていいほど不動産を知らない状況にあるとしたら…。 本書では二十数…

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