(※写真はイメージです/PIXTA)

「保険」は人類が考え出した偉大な叡智のひとつです。しかし、一般的な高齢者に民間の生命保険は必要がないと、経済コラムニストとして活躍する大江英樹氏はいいます。本連載では、同氏の著書『50歳からやってはいけないお金のこと』から、高齢者の保険について、一部抜粋してご紹介します。

最も必要性が高いのは「自動車保険の対人賠償」

このように考えていくと、入る必要性が高い保険の最もわかりやすい具体的な例は、自動車保険の「対人賠償」です。

 

自動車を運転していて事故を起こし、相手を死亡させるなどということはめったに起きることではありません。でも、もし起きてしまったら、何億円もの賠償金はとても自分の蓄えで払うことは無理でしょう。それに、車を運転している限り、いつこのような人身事故が起きるかはわかりません。だからこそ、車を運転するなら、対人賠償無制限というのは絶対入っておくべき保険なのです。

 

恐らくほとんどの人は、自分が運転していて死亡事故を起こすなどということは、 生涯経験することがないでしょう。そんなめったに起きないことだから年間数万円の保険料で何億円もの賠償金をまかなうことができるのです。これこそが保険の意味であり、重要な役割です。

 

ところが、車両保険の場合はどうでしょう? 車両保険というのは、言わば自損事故に対する補償です。こちらは人身事故と異なり、割とよく起きることです。車庫入れする時にちょっと擦ったりすることはよくあります。よく起きるからこそ、保険料が高いのです。ですから、 中古で車を買った時は車両保険には入らないという人も結構います。

普通の高齢者に生命保険は必要ない

このように論理的に考えていくと、自ずと保険に入るべきケースと保険が不要なケースが明らかになってきます。

 

例えば生命保険。会社を定年退職した人にとって、生命保険はほとんど無用と言っていいでしょう。 生命保険の役割は、一家の働き手が亡くなってしまった時に残された遺族の生活保障にあります。したがって、独身で扶養者もいない人であれば生命保険は不要ですし、定年になった人で子供が既に独立しているのであれば、やはり生命保険に入る必要はありません。

 

まだ年齢が若くて子供が小さい、そして奥さんは専業主婦という場合には生命保険に入った方がいいと思いますが、その場合でも、「遺族年金がいくらぐらいもらえるのか?」、会社員であれば「勤めている会社に遺族補償や弔慰金といった制度がないか?」といったことを調べ、いくらぐらいの金額が受け取れるかを把握した上で、足りない分だけ掛け捨てで保険料の安い生命保険に入ればいいのです。

 

年輩の人で生命保険が必要なのは数億円の資産を持っている人です。そういう人が相続税対策として入ることは有効ですが、普通の人であれば、高齢者に生命保険は必要ありません。もちろん私も生命保険には全く入っていません。

 

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50歳からやってはいけないお金のこと

50歳からやってはいけないお金のこと

大江 英樹

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