(※写真はイメージです/PIXTA)

「保険」は人類が考え出した偉大な叡智のひとつです。しかし、一般的な高齢者に民間の生命保険は必要がないと、経済コラムニストとして活躍する大江英樹氏はいいます。本連載では、同氏の著書『50歳からやってはいけないお金のこと』から、高齢者の保険について、一部抜粋してご紹介します。

高齢期に必要なのは「保険」よりも「現金」

このように冷静に論理的に考えると、入るべき保険と入る必要のない保険が見えてきます。

 

ところが、どうやら日本人は世界一保険が好きな国民のようで、かなり過剰に保険に入っているように思えます。公益財団法人生命保険文化センターが3年に一度「生命保険に関する全国実態調査」をおこなっています。直近の2021年度の調査を見ると、生命保険で払い込む保険料は全世帯平均で年間37.1万円となっています。([図表1]

 

これが中高年齢層になると増える傾向があります。 50代前半では43.2万円、50代後半になると43.6万円。60代前半では38.4万円 といったん減少しますが、60代後半には再び43.6万円と増加しています。([図表2]

 

出所:生命保険文化センター「2021年度生命保険に関する全国実態調査<速報版>」
[図表1]世帯年間払込保険料(全世帯員の年間振込保険料の総合計÷生命保険に加入している世帯数) 出所:生命保険文化センター「2021年度生命保険に関する全国実態調査<速報版>」

 

出所:生命保険文化センター「2021年度生命保険に関する全国実態調査<速報版>」
[図表2]世帯年間払込保険料(全生保)[世帯主年齢別] 出所:生命保険文化センター「2021年度生命保険に関する全国実態調査<速報版>」

 

前述したように、高齢期になれば生命保険に入る必要があるかどうか疑問です。むしろ、高齢期に必要なのは保険ではなくて現金です。保険はその保険がカバーする事態が起こった時にしか支払われませんが、現金を貯めておけば何にでも使うことができます

 

毎年40万円以上も保険料を払い続ける、それも自分が死んだ後に支払われる生命保険にそんな金額を払い続けるよりも、その分を貯金しておけば、50歳から70歳までの20年間で 800万円以上になります。

 

病気になった時は公的医療保険で治療費をまかない、個室に移りたい場合やタクシーで病院に行きたい場合は、生命保険料の代わりに貯めていた貯金から使えばいいだけです。そう考えると、医療保険もやめてしまえば、おそらく1,000万円を超える金額を貯めることができるでしょう。

 

病気になった時の治療費は公的保険でまかなえるのですから、そのお金は入院した時の個室代に使えばいいし、幸いにして病気にならなければ、そのお金を、定年後に夫婦で旅行に出かけたり、遊びに来た孫に好きなものを買ってあげたりといった、人生における多くの 楽しみに使うべきではないかと私は考えます。

 

 

大江 英樹

株式会社オフィス・リベルタス

取締役

 

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50歳からやってはいけないお金のこと

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大江 英樹

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