(※写真はイメージです/PIXTA)

贈与を行う理由としては「子どもや孫にあげて喜んでほしい」「生活費や学費に使用してもらいたい」「将来の相続税を節税したい」など、様々なものが挙げられます。相続税の申告義務がある人において、相続税の税率が贈与税の税率より高い場合、贈与をすることで節税をすることが可能となります。そこで今回は相続税の節税に焦点を当て、税理士法人ブライト相続・代表社員税理士の戸﨑貴之氏がわかりやすく解説していきます。

「生前贈与と主張したが…」税務署に否認されるワケ

今回の例においては、当事者間で贈与と認識があった場合でも、証拠づくりがなされていないと税務調査によって思わぬ判断を下されてしまいます。

 

生前贈与に対しての調査が行われるのはあげた時ではなく、相続税を申告した1~2年後に行われる相続税の調査時です。つまり、あげた人である父親は既に亡くなっているため、受け取った長男が税務署とのやりとりに応じることとなります。

 

調査において、お金の移動を指摘された際に「相続税の節税対策として生前贈与という形でもらった」と税務署に説明をします。今回の例の場合、贈与税の申告義務が発生する110万円を超過しているにも関わらず贈与税が無申告であったため、「贈与の認識があったかどうか」が重要な判断材料となってきます。

 

ですが、実際に生前贈与を行う方のほとんどが贈与税の申告義務について事前知識がないかと思われます。そのため、申告の義務があることを知るのが時効成立後である可能性もあります。

 

しかし、税務署の調査により

 

⚫︎長男名義となっている通帳が亡くなった父親によって作られたものである

⚫︎通帳の存在についての記憶が曖昧である

⚫︎通帳履歴から使用の形跡がない

 

などの事情が判明した場合、亡くなった父親が長男名義で口座を勝手に作り、勝手にお金を動かしたと捉えられます。

 

これにより、通帳の作成が長男本人でない上に使用履歴もないため、実質的には管理ができていなかったとみなされ、贈与ではなく名義預金であると判断されます。

 

そして、名義預金や貸し付けにおいては時効という概念は存在しないため、今回の例のように相続財産とみなされた場合は、税金を払う義務が発生し、節税対策の意味が無くなるということが起こり得ます。

「税務署に否認されない生前贈与」5つの方法

生前贈与は“証拠”を残すことが非常に重要となってきます。そして、相続税の税務調査を想定して贈与を実行する必要があります。

 

具体的な対策をご紹介します。

 

①通帳間でやりとりを残す・通帳に“贈与”とメモをする

 

→現金としてお金を引き出す・渡すというやり取りをすると記録が残りません。お金の履歴がないと贈与と証明することが難しくなります。更に、あげた人・もらった人双方の通帳に“贈与”とメモをすることでより証拠力が強まります。

 

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