(※写真はイメージです/PIXTA)

もし、一家の大黒柱が亡くなったら、生計を維持してもらっていた家族が路頭に迷わないための「遺族年金」の制度があります。どのような受給条件があり、いくら受け取れるのでしょうか。司法書士の岡信太郎氏、税理士の本村健一郎氏、社会保険労務士の岡本圭史氏が監修した『改訂新版 身内が亡くなったあとの「手続」と「相続」』(三笠書房)から、事例を交え紹介します。

故人が厚生年金加入者なら年金額の4分の3を受給できる

一方、遺族厚生年金は、故人が会社に勤めていて、厚生年金に加入していた場合に、遺族に支払われる年金です。公務員などで共済年金に入っていた場合も、こちらに含まれます。故人が会社を退職し、老齢厚生年金の受給資格を満たしていた場合にも、遺族は受給する権利があります。

 

年金を受け取ることができる人は、故人によって生計を維持されていた家族であるという点は、遺族基礎年金と同様ですが、範囲は少し広がります。妻や子どもはもちろん、場合によっては55歳以上の夫や父母・祖父母、孫なども可能です。

 

なお、18歳の年度末まで(もしくは20歳未満で、障害1・2級)の子どもか、そうした子どものいる妻は、遺族基礎年金もあわせて受けられます。

 

毎年受け取ることができる年金額は報酬比例の年金額の4分の3です。

 

会社勤めと自営業の期間が両方ある人の場合、老齢厚生年金の受給資格期間が25年以上あれば、遺族厚生年金の対象となります。

 

最後に、会社員の夫に先立たれたときの妻の遺族年金額がいくらになるか、2つのケースを紹介します。

 

◆ケース1|夫は会社員、妻は専業主婦だった場合

まず、夫が会社員で年収500万円、妻が専業主婦だった場合です([図表4]参照)。

 

[図表4]夫は会社員、妻は専業主婦だった場合

 

夫が生きていれば、夫婦で受け取れる年金月額は合計22.2万円です。

 

【夫が生存していた場合の年金月額⇒夫婦で合計22.2万円】

・夫:年収500万円、厚生年金(40年加入)

   ⇒老齢厚生年金9.2万円+老齢基礎年金6.5万円

・妻:国民年金(40年加入)

   ⇒老齢基礎年金6.5万円

 

これに対し、夫が亡くなった場合、妻の老齢基礎年金に、遺族年金として夫の老齢厚生年金(月9.2万円)の4分の3の額(6.9万円)が上乗せされるので、妻が受け取れる年金額月額は合計13.4万円となります。

 

【夫が死亡した場合の妻の遺族年金月額⇒13.4万円】

・妻:遺族厚生年金6.9万円+老齢基礎年金6.5万円

   ⇒13.4万円

 

◆ケース2|夫婦とも会社員で、妻のほうが夫より年金額が多い場合

次に、夫婦とも会社員で、夫が年収400万円、妻が年収550万円だった場合です([図表5]参照)。

 

[図表5]夫婦とも会社員だった場合(妻のほうが夫より年金額が多い場合)

 

夫が生きていれば、夫婦で受け取れる年金月額は合計30.2万円です。

 

【夫が生存していた場合の年金月額⇒夫婦で合計30.2万円】

・夫:年収400万円、厚生年金(40年加入)

   ⇒老齢厚生年金7.2万円+老齢基礎年金6.5万円

・妻:年収550万円、厚生年金(40年加入)

   ⇒老齢厚生年金10万円+老齢基礎年金6.5万円

 

これに対し、夫が亡くなった場合、妻の方が老齢厚生年金額が多いのであれば、妻は夫の遺族厚生年金を受け取ることができません。

 

【夫が死亡した場合の妻の遺族年金月額⇒13.4万円】

・妻:遺族厚生年金6.9万円+老齢基礎年金6.5万円

   ⇒13.4万円

 

以上、述べてきたように、遺族年金は、故人が加入していた公的年金の種類、家族構成、遺族の収入の有無ないしは金額等の条件によって、受給の可否、受給金額等が異なります。また、遺族年金を受給できない場合でも、その他の年金や一時金を受け取れることがあります。

 

まずは、どのようなお金をいくら受け取れるのか、条件を確認することが大切です。

 

 

岡 信太郎

司法書士のぞみ総合事務所

代表、司法書士

 

本村 健一郎

税理士法人TAパートナーズ

代表CEO、税理士

 

岡本 圭史

社会保険労務士法人カナロア

代表、社会保険労務士

 

2025年2月8日(土)開催!1日限りのリアルイベント
「THE GOLD ONLINE フェス 2025 @東京国際フォーラム」
来場登録受付中>>

 

【関連記事】

■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】

 

■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」

 

■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ

 

■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】

 

■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】

 

改訂新版 身内が亡くなったあとの「手続」と「相続」

改訂新版 身内が亡くなったあとの「手続」と「相続」

岡 信太郎・本村 健一郎・岡本 圭史

三笠書房

「何から手をつければいいかわからない…」 「スムーズにいかず気持ちが焦る」 多くの相談者から寄せられる言葉です。 実際、葬儀後にはやるべきことがたくさんあります。 ◆不動産、株式や投資信託などの相続は? ◆…

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録