故人が厚生年金加入者なら年金額の4分の3を受給できる
一方、遺族厚生年金は、故人が会社に勤めていて、厚生年金に加入していた場合に、遺族に支払われる年金です。公務員などで共済年金に入っていた場合も、こちらに含まれます。故人が会社を退職し、老齢厚生年金の受給資格を満たしていた場合にも、遺族は受給する権利があります。
年金を受け取ることができる人は、故人によって生計を維持されていた家族であるという点は、遺族基礎年金と同様ですが、範囲は少し広がります。妻や子どもはもちろん、場合によっては55歳以上の夫や父母・祖父母、孫なども可能です。
なお、18歳の年度末まで(もしくは20歳未満で、障害1・2級)の子どもか、そうした子どものいる妻は、遺族基礎年金もあわせて受けられます。
毎年受け取ることができる年金額は報酬比例の年金額の4分の3です。
会社勤めと自営業の期間が両方ある人の場合、老齢厚生年金の受給資格期間が25年以上あれば、遺族厚生年金の対象となります。
最後に、会社員の夫に先立たれたときの妻の遺族年金額がいくらになるか、2つのケースを紹介します。
◆ケース1|夫は会社員、妻は専業主婦だった場合
まず、夫が会社員で年収500万円、妻が専業主婦だった場合です([図表4]参照)。
夫が生きていれば、夫婦で受け取れる年金月額は合計22.2万円です。
【夫が生存していた場合の年金月額⇒夫婦で合計22.2万円】
・夫:年収500万円、厚生年金(40年加入)
⇒老齢厚生年金9.2万円+老齢基礎年金6.5万円
・妻:国民年金(40年加入)
⇒老齢基礎年金6.5万円
これに対し、夫が亡くなった場合、妻の老齢基礎年金に、遺族年金として夫の老齢厚生年金(月9.2万円)の4分の3の額(6.9万円)が上乗せされるので、妻が受け取れる年金額月額は合計13.4万円となります。
【夫が死亡した場合の妻の遺族年金月額⇒13.4万円】
・妻:遺族厚生年金6.9万円+老齢基礎年金6.5万円
⇒13.4万円
◆ケース2|夫婦とも会社員で、妻のほうが夫より年金額が多い場合
次に、夫婦とも会社員で、夫が年収400万円、妻が年収550万円だった場合です([図表5]参照)。
夫が生きていれば、夫婦で受け取れる年金月額は合計30.2万円です。
【夫が生存していた場合の年金月額⇒夫婦で合計30.2万円】
・夫:年収400万円、厚生年金(40年加入)
⇒老齢厚生年金7.2万円+老齢基礎年金6.5万円
・妻:年収550万円、厚生年金(40年加入)
⇒老齢厚生年金10万円+老齢基礎年金6.5万円
これに対し、夫が亡くなった場合、妻の方が老齢厚生年金額が多いのであれば、妻は夫の遺族厚生年金を受け取ることができません。
【夫が死亡した場合の妻の遺族年金月額⇒13.4万円】
・妻:遺族厚生年金6.9万円+老齢基礎年金6.5万円
⇒13.4万円
以上、述べてきたように、遺族年金は、故人が加入していた公的年金の種類、家族構成、遺族の収入の有無ないしは金額等の条件によって、受給の可否、受給金額等が異なります。また、遺族年金を受給できない場合でも、その他の年金や一時金を受け取れることがあります。
まずは、どのようなお金をいくら受け取れるのか、条件を確認することが大切です。
岡 信太郎
司法書士のぞみ総合事務所
代表、司法書士
本村 健一郎
税理士法人TAパートナーズ
代表CEO、税理士
岡本 圭史
社会保険労務士法人カナロア
代表、社会保険労務士
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