献身的に故人を介護した相続人は遺産を多めにもらえるのか
老人ホームへの入居、家の改築、医療費、日常的な介護費用……。多くの場合、介護には、多額の費用がかかります。
しかし、相続人の1人が懸命に介護することで、介護度の進行を遅らせることは可能でしょう。
結果、たとえば老人ホームに入居せずにすめば、それは故人の財産の維持、または増加に貢献したといえます。
介護に限らず、故人の事業を手伝ったなど、財産の維持や増加に貢献した人は、法定相続より貢献の度合いだけ相続分を増やす権利があります。
この増やしたぶんを「寄与分」といいます。
たとえば、被相続人の遺産が6,000万円で、妻と3人の子(長女、長男、次男)がおり、長女が被相続人の介護をずっと担ってきたという事例でみてみましょう([図表1]参照)。
妻の法定相続分2分の1、3人の子の法定相続分は6分の1ずつなので、この通りに遺産分割すると、各人の相続分は以下の通りになります。
【法定相続分通りに遺産分割した場合】
・妻:3,000万円
・長女:1,000万円
・長男:1,000万円
・次男:1,000万円
しかし、介護の労力を負担してきた長女が寄与分を主張し、その額が600万円と認められると、その分を除いた5,400万円を法定相続分に応じて分けることになります。結果として、各人が取得する財産は以下の通りとなります。
【長女の寄与分を反映した遺産分割割合】
・妻:2,700万円
・長女:1,500万円(900万円+寄与分600万円)
・長男:900万円
・次男:900万円
寄与分の計算方法は決まっていません。「財産の増加に貢献する介護とそうでない介護の違い」や「介護によって具体的にいくらの財産の維持・増加に貢献したのか」などを数値化するのは困難ですし、本人の主張の仕方によっても印象は変わります。
遺産分割協議でまとまらなければ、家庭裁判所に申立をして、寄与分を決めてもらう方法があります。
参考までに、以下は、計算式の一例です([図表2]参照)。
「介護の日当額」は、プロの介護士の日当額が目安となります。また、「裁量的割合」は家庭裁判所がケースバイケースで判断します。
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