カナダの看護師資格は更新が必要
カナダでは、看護師の資格は毎年更新する必要があります。資格はPractrice(勤務中)またはNon-practice(離職中)のいずれかとなり、もし何かを勉強するためにもう一度学校に行きたい、といった場合でも、Non-practiceの状態で免許を保持することが可能です。
Non-practiceの更新は60から70カナダ・ドル(約6,364円から約7,424円)程度で済みますが、Non-practiceからPracticeに変更するためには、期間により手続きや費用が発生します。また、場合によっては課題が生じることもあります。
このシステムの良さは、知識を持ち、即戦力となる人材の採用に繋がるところです。日本では、10年や20年働いていなくても「看護師の資格を持っているから」という理由ですぐに働けます。
看護師の資格の管理は国レベルではなく、州レベルで行われます。なので私の場合は、「ブリティッシュコロンビア州に所属する看護師」です。もし州を跨いで仕事をしたい場合は、各州の規則に従って資格を変更する必要があります。
どの国でも看護師として働いた証明があれば、それは資格として認められますが、外国人がカナダで看護師として働くためには、さらに約700カナダ・ドル(約7万4,263円)の更新料を厚生省に支払う必要があります。北米では、カナダの出張看護師がアメリカで働く、といった例もあります。
再び働くために。必要なのは「しっかりと説明できること」
カナダでは、先ほどの「看護の仕事だけに集中できる」という話でも示されているように、さまざまな事柄について曖昧なラインが少ないと感じています。
例えば、産休でしばらく働けない期間があったとしても全然問題ありません。ただ、自分が看護師の免許を持ち、この年に何をしたのか、どの程度の実務経験を持つのかをしっかりと説明できること、それによって働けるかどうかが決まります。また、現場からしばらく離れていた人が看護師に戻りたいと希望する場合、州から指定された研修やトレーニングを受けた後、現場に戻るというステップを踏むことができます。
私の所属する産科に関する話をすると、日本では、看護師の国家試験を合格してさえいれば産科で働くことができますが、カナダでは産科で働く看護師になるためには専門コースを受講し、産科看護師の試験を受ける必要があります。私は日本で助産師をしていたため、単位を免除してもらい、運良くカナダの産科で働くことができました。
ちなみに、カナダでは、出産した後に入院できるのは1日だけになります。日本では産後の入院期間は1週間ありますよね。カナダではその代わり、退院後は助産師や保健士、一般診療看護師(GP)や診療看護師(NP)が産後のフォローアップを担当します。帝王切開の場合、退院は産後48時間です。また、無痛分娩には追加費用はかかりません。
カナダにおける看護師組合の役割
カナダでは病院が利益を優先することなく、看護師が適切な患者数を担当するための規則に厳格に従っている病院が基本です。日本では病院によって受け入れる患者数に制限がある場合もありますが、利益至上主義で患者数を増やし、看護師含めた医療従事者が、忙しくて手が回らないという状況は私が聞いた話ではよくあることのようでした。
例えば無痛分娩のように、患者への長時間にわたる処置や観察などが必要な場合、看護師は忙しくなります。日本ではそれをカバーするほどの医療体制が確立できておらず、非常に忙しくなってしまいます。カナダでは看護師組合が非常に強いため、違法な業務を看護師に課す場合、組合が違法だとしてすぐに声を上げ、現場へ異議を申し立てます。
今の職場の先輩看護師に「私たちも働く環境がすごく悪かった。だけど皆で声を上げて、自分達で変えていったの」とよく言われていました。その方も実際に、20年ほど前に他の看護師たちとともにストライキを起こしたそうです。
カナダの看護師の働く環境は、最初から今日のような状態だったのではなく、看護師の仕事の価値が社会に認識されるようになり、徐々に報酬も上がり、その他の待遇も改善されていったのです。