そんなの聞いてませんよ!…川崎さん「大激怒」のワケ
筆者はさらに、「それに川崎様のように生涯現役を貫かれると、ここに書かれている老齢厚生年金も受け取りができなくなる可能性が高いですね。在職老齢年金という制度があって、給与と厚生年金を合わせて48万円以上になると年金が調整されます。川崎様は、老齢厚生年金が月7万円ですから、給与が55万円以上になると全額が支給停止です」と続けました。
「もし、在職老齢年金により厚生年金がカットされてしまうと、その分は受け取り時期を遅らせて年金額を増やすこともできません。また、全額支給停止となった場合、年下の奥様と18歳以下の子どもに対する加給年金も支給されなくなってしまいますよ」
筆者の話に、川崎さんは大激怒。
「ちょっと待ってください。年金額に反映されない報酬なんていうのがあるんですか? それに僕は、少しでも長く働いて年金を繰り下げようと思っていたのに、在職老齢年金ってなんですか、給与があると年金がもらえないというのも納得いかないし、繰下げもできないなんて……そんなの聞いていませんよ! それに、さっき言った加給年金っていうのはなんなんですか?」と、早口でまくし立てられました。
加給年金は、厚生年金から支給される家族手当のようなもので、川崎さんが65歳になると、奥様が65歳になるまでの20年間にわたり、年間約40万円の手当が受けられます。しかし、在職老齢年金で加算の対象となる厚生年金が全額カットされてしまうと、この加入年金は受けられなくなるのです。
40万円の20年分は800万円ですから、かなり大きな金額です。さらに、お子さんが18歳になるまでは追加で22万4,700円つきます。よって、川崎さんの場合、65歳時点で娘さんが10歳ですから、8年分の179万7,600円も受け取れなくなる可能性があるのです。
「今まで年金なんてどうせもらえないだろうと思っていましたが、いざもらえない金額を聞くとなんかものすごく損をした気分です。なんとか年金がカットされずに受け取れる方法はないものでしょうか?」川崎さんは神妙な面持ちでこちらをのぞき込みます。
在職老齢年金と加給年金については、65歳以降の給与額を調整することで、対策は可能です。
また、足下での報酬を効率良く厚生年金額に反映させたいというのであれば、企業型確定拠出年金を導入して一部掛金に振り分けることも可能でしょう。
そのほか、奥様に会社の仕事を手伝ってもらい報酬を支払うなど、他にも考えられることはあります。
いずれにしても、年金については正しい知識を理解したうえで、国の制度をどう活用するのか考えるのが良さそうです。
山中 伸枝
株式会社アセット・アドバンテージ
代表取締役
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