「生涯現役」を望んでいたが…年金制度の落とし穴
「年金なんてあてにならない」と言いながらも、自分だけがもらえない年金があると知ると、損をした気分になるものです。今回ご紹介する川崎さん(仮名)もまさにそのひとりでした。
子どもが小さいので、これからのライフプランを考えたいという川崎さんは、イベントの企画会社を経営しています。
20歳年下の奥様との間には、4歳の娘さんがいます。奥様とは再婚で、最初の奥様との間には息子さんが1人いますが、すでに成人されているので養育費の支払い等は完了しているとのことです。家族に不自由な思いはさせたくないと、「生涯現役」を貫きたい気持ちでいます。
筆者はまず、川崎さんがすでにお持ちの資産の確認から始めました。金融資産の他、不動産、経営している会社の株や年金などがそれにあたります。
そのうえで、ご持参いただいたねんきん定期便を確認しました。国民年金加入期間は10年、厚生年金加入期間は19年、年金の受給資格期間は合計29年です。川崎さんは現在59歳ですから、10年ほどの未納期間があります。
40歳で法人成りし、その頃からやっと仕事が順調になったということで、現在の収入は月120万円、年収は1,440万円です。60歳までこの状況が継続することを前提としたねんきん定期便には、老齢厚生年金85万円、老齢基礎年金60万円、合計145万円(年間受給額)と記載されています。
「支払っている保険料の割に、年金って本当に少ないですよね。月10万円程度じゃ暮らせるワケがない」とおっしゃるので、「そうですね。特に川崎様のように報酬が高い場合、老齢厚生年金の金額に反映されてこない部分が大きいので、そうお感じになりますよね」と返すと、川崎さんは怪訝な顔をされました。
厚生年金は、別名“報酬比例”ともいわれます。そのため「報酬が高ければそれだけ将来受け取れる年金額が多い」と思っている人も多いですが、実際のところ将来の年金額に反映される月の報酬は「65万円」が上限です。つまり川崎さんの場合、月の報酬の約半分は受取額に反映されていません。
もちろん、上限を超えた部分は保険料の対象になっていないため「払い損」ということではないのですが、このような年金の仕組みを理解していない経営者は少なくありません。
健康保険の等級は厚生年金の等級より幅があるので、高い高いと思われる社会保険料は、厚生年金ではなく健康保険料である場合が多いのです。
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