「小盛り」メニュー提供の推奨で食べ残し削減
外食や小売りなど事業者側で食品ロスを減らそうという取り組みも進む。外食では客の食べ残しは捨てざるを得ない。最初から客が小盛りメニューを選べるようにしたり、店内での食べ残しを持ち帰れるようにしたりした「食べきり協力店」を公表・推奨するような取り組みをしている自治体は都内で26区市に及ぶ。
東京都文京区では「ぶんきょう食べきり協力店」として71店舗を登録し、ウェブサイトで各店の取り組みを紹介している。通常より値引きして量が少ないメニューを選べるようにする例が多く、少食の人にとっては経済的なメリットもあるといえる。文京区の担当者によると「店側の利点が明確にあるわけではないが、食品ロス削減の理念に共感して取り組みを進めてくれているところが多い」という。
小売店で賞味期限の短い食品から先に買ってもらおうという運動も食品ロス削減を意識した動きだ。スーパーでは冷蔵食品の棚に、コンビニエンスストアなどではおにぎりやパンの棚に「『てまえどり』にご協力ください」というメッセージを掲げる店も目立つようになってきた。
「てまえどり」とは手前にある商品から取るという意味だ。農水省、消費者庁、環境省は小売りの業界団体である日本フランチャイズチェーン協会と組んで共通のメッセージカードを作成している。
小売店では手前に古い商品を、奥に新しい商品を並べるのが普通だ。一方で家で長く保存できるように、あえて後ろの方から商品をとる消費者も一定数いるようだ。ただそれが多数派になるといつまでも売れないままで廃棄につながる商品も出てきかねない。そこで「てまえどり」をマナーとして定着させようとしている。
廃棄食品の削減、消費者の意識向上がカギ
今後さらに食品ロスを減らすにはどうしたらいいのか。廃棄予定の食品を買い付けて販売したり生活困窮者に配布する活動をしているNPOである日本もったいない食品センター(大阪府摂津市)の高津博司代表理事は食品ロスが起きる理由について「消費者の理解不足」を指摘する。
例えば「賞味期限」の表示だ。期限を過ぎても風味が落ちるだけで直ちに食べられなくなるわけではないが、敬遠する人は多い。小売店もその点を気にして期限前の早い段階で返品や廃棄を進めてしまう現状がある。高津氏は「行政には消費者が『意識』と『知識』を高められるように、一層の普及啓発活動に力を入れて欲しい」と話す。
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1981年東京生まれ。日経新聞記者(2007~22年)を経てフリーに。 23年より文京区議会議員も務める。公式サイト