「食品廃棄の削減」へ国や自治体が本腰──拡大する「不要食品を再利用した」貧困支援の現状

「食品廃棄の削減」へ国や自治体が本腰──拡大する「不要食品を再利用した」貧困支援の現状
画像:PIXTA

国や自治体が食品の廃棄を減らす取り組みに本腰を入れ始めている。日本で日々捨てられる食品は膨大な量にのぼる。SDGs(持続可能な開発目標)の考えが広がる中、外食での食べ残しを減らす取り組みや、不要な食品を集めて貧困家庭に配布するなど福祉と組み合わせた事業も広がっている。本記事では、無駄を減らして持続可能な社会作りにつなげようと努力している、国や自治体の取り組みについて紹介する。※本連載は、SDGsを実践する企業を支援するWebサービス「coki」からの抜粋転載です。

食べられるのに捨てられる「食品ロス」 毎日茶碗1杯分

 

食品ロス内訳:農林水産省作成
食品ロス内訳:農林水産省作成

 

 

まだ食べられるのに捨てられてしまう食品は「食品ロス」と呼ばれる。農林水産省の推計によると、その量は2020年度で年間523万トンに及ぶ。新型コロナウイルスの影響などで外食が減少し、それ以前に比べるとやや減ったものの、国民1人当たりに直すと年間およそ42キログラムの食品ロスがある。1日当たりでは114グラムとなり、毎日茶碗一杯分のごはんを捨てていることに相当する。

 

世界には栄養不足に苦しむ人も多数いる。食料の多くを輸入に依存している日本としては、食品ロスを減らすことは国全体で取り組むべき課題だと認識されるようになった。食品ロスのうち、外食産業での食べ残しや小売りでの売れ残りなど売り手(事業者)側の要因によるものが約半分、家庭側のロスが残りの半分を占める。この両方でロスを減らしていくことが問題解決のカギとなる。

 

このような状況を背景に、国は2019年には「食品ロスの削減の推進に関する法律」を制定した。国や自治体、事業者の責務などを定め、事業者への支援をうたっている。また事業系の食品ロスを2030年度には2000年度比で半減させる目標を立てている。自治体が取り組みを強化しているのも法律の制定と無関係ではない。

 

不要な食品、自治体が回収 貧困支援に供与も

 

回収窓口写真:江東区は民間施設内にも食品の回収窓口を設置している(無印良品東京有明、写真は江東区提供)
回収窓口写真:江東区は民間施設内にも食品の回収窓口を設置している(無印良品東京有明、写真は江東区提供)

 

家庭側での食品ロスを減らすために広く実施されているのが、自宅や事業所にある不要な食品を持ち寄り欲しい人に配布する事業だ。特に食品を生活困窮者を支援する団体などに寄付する事業は「フードドライブ」と呼ばれる。

 

東京都の調べによると、都内では島しょ部を除く53区市町村のうち8割に当たる42区市が何らかのフードドライブ事業を展開している。区部では23区すべてが実施中だ。

 

例えば東京都江東区では区内17ヵ所に常設の回収窓口を設置した。文化センターやスポーツセンターなどの区有施設内がほとんどだが、ショッピングモールの店舗の中に設けた回収窓口もある。「未開封」「賞味期限まで2ヵ月以上ある」といった条件はあるものの、缶詰から飲み物まで様々な食品を受け入れている。

 

受け入れた食品は、区内で生活に困窮する子供を中心に食事を提供する「こども食堂」などに送って活用してもらっているという。同区で食品回収を担当する清掃リサイクル課の担当者は「回収の一番の目的はごみの減量だ。その観点からは食品が集まらないほうが望ましいともいえる。ただ結果的に貧困支援にも貢献できているのは良いことだ」と話す。

 

国自身も食品の寄付者になっている。国の各省庁や地方の出先機関では防災のために備蓄している食料が多数ある。保存期限がすぎる前に、これらを困窮者を支援する民間団体向けに定期的に提供している。ウェブサイトを見てみると、地方検察庁、財務局、法務局、少年鑑別所などの意外な組織が缶詰を配布するなどと情報提供しているが目につく。

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