妻が逝去して「1,500万円の生命保険金」を受け取った夫、「相続税非課税」のつもりが数年後に追徴課税…「何かの間違いでは?」【税理士が解説】

妻が逝去して「1,500万円の生命保険金」を受け取った夫、「相続税非課税」のつもりが数年後に追徴課税…「何かの間違いでは?」【税理士が解説】
(※画像はイメージです/PIXTA)

生命保険を契約する場合、「契約者」「被保険者」「受取人」の関係によって、かかる税金の種類が異なります。当然、税金の種類に応じて計算方法や受けられる税制優遇の内容も大きく異なります。このことについては誤解も多く、後になって予期せず追徴課税を受けるケースが散見されます。税理士の黒瀧泰介氏が、事例をもとに解説します。

生命保険金「500万円×法定相続人数」は相続税非課税…のはずが

Xさん(50代・男性)は大学教授で、家族は医師の妻Yさん(40代)と、2人の子(20歳と17歳)です。

 

XさんとYさんは、20年前に第1子が誕生したのを機に、互いを保険金受取人として、生命保険に加入していました。掛け捨てではなく、貯蓄もかねた「終身保険」です。60歳以降に解約したら、支払った保険料の総額を超えるお金を受け取れるタイプの商品です。死亡保険金額はそれぞれ「1,500万円」に設定しました。

 

ところが、ある日、Yさんは不慮の事故で亡くなりました。

 

Xさんは、Yさんが契約していた生命保険の死亡保険金1,500万円を受け取りました。「死亡保険金は相続税の課税対象だが、500万円×法定相続人数の額は非課税になる」という知識を持っていたので、それを前提に、相続税の納税申告を行いました。

 

ところが、数年後、Yさんの相続について税務調査が入り、Xさんに対し、税務署から、「所得税」の申告漏れを理由とする追徴課税の通知が行われました。

 

「何かの間違いでは?」と思ったXさんですが、税務署員の指摘を受けて、納得せざるをえませんでした。

「契約者」の理解を誤っていたXさん

このケースで、Xさんが追徴課税を受けてしまったのは、生命保険の「契約者」の理解を誤っていたことが原因です。

 

生命保険の死亡保険金を受け取った場合、課税関係は、「契約者」「被保険者(保険の対象者)」「受取人」の関係によって異なります。たとえば、Yさんを被保険者、Xさんを受取人とする場合は以下のようになります。

 

【パターン1】相続税

 ・契約者:Yさん

 ・被保険者:Yさん

 ・受取人:Xさん

 

【パターン2】所得税・住民税(一時所得)

 ・契約者:Xさん

 ・被保険者:Yさん

 ・受取人:Xさん

 

Xさんは、【パターン1】だと思っていたのです。本件の生命保険契約の契約名義はYさんだったからです。

 

しかし、税務署員からの説明は、【パターン2】に該当するので、所得税(一時所得)として課税されるというものでした。

 

理由として、「契約者」は「保険名義人」ではなく「保険料を負担した人」を意味するから、という説明を受けました。

 

保険法2条2号は「保険契約者」について「保険契約の当事者のうち、保険料を支払う義務を負う者をいう」と定義しています。

 

法律上の「保険契約者」と、実際の契約上の「契約者」とは異なるということです。

 

保険加入当時、Yさんは医学生で収入がなかったので、保険料はXさんの口座からの引き落としということにしたのです。終身保険は貯蓄性の保険なので、保険料が割高なのです。

 

その後、Yさんは医師になり、それなりの収入を得るようになりましたが、保険料の引き落とし口座については、特に気に掛けることもなく、Xさんの口座のままにしていたのです。

 

税務署が今回の件について把握したのは、Yさんの相続に関する税務調査を進めていく中で、Yさん名義の生命保険の真の契約者(保険料負担者)がXさんだと判明したからです。

 

それにより、本来、「相続税」ではなく、「所得税」の範囲の問題だったと認定されたのです。そして、Xさんが納税義務を負うべき所得税が納税されていなかったということで、追徴課税が行われることになったということです。

 

今回紹介したような事例は、決して珍しいものではありません。生命保険は契約パターンによって税金の種類自体が異なってきますので、契約の際には正確に理解しておく必要があります。特に、「契約者」が「保険料負担者」であることを心に留めておく必要があります。

 

 

黒瀧 泰介

税理士法人グランサーズ 共同代表

公認会計士・税理士

 

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