(画像はイメージです/PIXTA)

事業主にとって、国からもらえる補助金はありがたいもの。ここでは、小規模事業の事業主向けの「小規模事業者持続化補助金」について、補助金の対象となる経費、補助金がもらえるまでの手続きについてみていきます。FP資格を持つ公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。

「持続化補助金」は、どんな人がいくらもらえるの?

生徒:先生、個人事業主でも最大250万円もらえる補助金があると聞きました。教えていただけませんか?

 

先生:それは「小規模事業者持続化補助金」のことだね。事業者がWebサイトを作るときや、新しい製造設備の導入するとき、店舗を改装するときなど、販路開拓や生産力強化などの取り組みを目的として幅広く利用できる補助金ですよ。

 

生徒:従業員を雇用していなければいけませんか?

 

先生:個人事業で、従業員ゼロでも大丈夫です!

 

生徒:従業員100人の大企業でも、もらえますか?

 

先生:いや、それはダメなんだ。対象者には常時使用する従業員数の要件があって、商業・サービス業は5人以下、それ以外は20人以下となっているよ。

 

生徒:いくらもらえるのですか?

 

先生:「通常枠」で50万円、「特別枠」で200万円。2023年度の持続化補助金の場合だと、「インボイス特例」があって、補助上限が50万円上乗せされる場合があるよ!

 

生徒:経費の全額が補助されるのですか?

 

先生:いや、支払った経費の3分の2だよ。200万円もらおうとすると、3分の2で逆算して300万円、消費税込みで330万円をかけないといけないね。

 

★小規模事業者におすすめの補助金についてはこちらをチェック

【小規模事業者持続化補助金】タダでもらえる補助金で250万円をゲットする方法を詳しく解説

持続化補助金の「通常枠」と「特別枠」とは?

生徒:「通常枠」と「特別枠」の違いはなんでしょうか?

 

先生:「通常枠」は、小規模事業者自らが作成した経営計画に基づいて、商工会・商工会議所の支援を受けながら行う販路開拓の取組みを支援するもの。「特別枠」には、〈賃金引上げ枠〉〈卒業枠〉〈後継者支援枠〉〈創業枠〉があって、それぞれ特別な要件が決められているよ。例えば、賃金引き上げ枠は、販路開拓の取り組みに加え、最低賃金よりも30円以上引き上げる取り組みを支援するものだね。

 

生徒:私は従業員を雇っていないので、〈賃金引上げ枠〉は使えそうにありません…。では、卒業枠はどのようなものでしょうか?

 

先生:〈卒業枠〉というのは、事業規模を拡大しようとする小規模事業者を支援するため、事業実施期間中に常時使用する従業員を増やして、小規模事業者と定義する従業員数を超える取り組みなんだ。商業・サービス業は5人、それ以外は20人を超えるまで、採用を増やす必要があるよ。採択されても、結果として従業員数が増えなければ、補助金はもらえないんだ。

 

生徒:これも私には使えそうにないですね…。では、後継者支援枠はどのようなものでしょうか?

 

先生:〈後継者支援枠〉は、将来的に事業承継を行う予定があって、新たな取組を行うものなんだ。申請するときに、経済産業省が開催する、後継者が既存の経営資源を活かした新規事業アイデアを発表するピッチイベント「アトツギ甲子園」のファイナリスト、または準ファイナリストになっている必要があるね。

 

生徒:それも、私にはまったく関係ないですね…。では、創業枠はどのようなものでしょうか?

 

先生:〈創業枠〉というのは、「特定創業支援等事業」による支援を、公募締切時から起算して過去3ヵ年の間に受けて、かつ、過去3年間に開業した事業者を支援するものなんだ。

 

[図表1]申請できる補助金の類型

 

生徒:ダメだ、それも無理そうですね…。私は、特定創業支援等事業による支援を受けていません。それなら、インボイス特例の適用が最後の望みでしょうか。

 

先生:「インボイス特例」というのは、免税事業者が適格請求書発行事業者へ転換することに対して支援を行うもので、2023年9月30日の属する事業年度において適格請求書発行事業者の登録を受けた事業者に対して、補助上限額を一律50万円上乗せするものなんだ。

 

生徒:適格請求書発行事業者になるには、どうすればいいのですか?

 

先生:適格請求書発行事業者の登録申請書を国税庁のWebサイトからダウンロードして、そこに必要事項を記入し、税務署に提出するだけでいいよ。ただし、適格請求書発行事業者になるということは、課税事業者になるということだから、免税事業者として消費税10%を納税しなくてもいいメリットがなくなってしまうので、注意したほうがいいよ。

補助金の対象となる経費の種類とは?

生徒:どのような経費が補助されるんですか?

 

先生:機械装置の購入費やリース料、広報費、ウェブサイト制作費、展示会出展費、試作品開発費、アルバイト人件費、工事の外注費などだね。

 

[図表2]補助対象となる経費の一覧

 

生徒:200万円ももらえるなら、立派なWebサイトが制作できそうですね!

 

先生:Webサイトの制作費は、補助金総額の4分の1、最大50万円が上限になっているんだ。また、Webサイト制作だけで申請はできなくなっているから、その点は要注意だよ。

 

生徒:そうなんですね。私も個人事業で申請してみたいですが、どれくらい採択されるのでしょうか?

 

先生:どの補助金でも同じだけれど、最初のうちはもらいやすくて90%が採択されていたけれど、近年は下がってきて60%くらいだね。それでも採択率は高いといえるよ。

 

生徒:私の場合、インターネット通販事業なんですが、通常枠でしょうか。

 

先生:「通常枠」だと、上限50万円、補助率3分の2だね。82万5,000円までの経費が対象となるよ。経営計画に基づいて実施する地道な販路開拓の取り組みが必要になるね。

補助金がもらえるまでの手続きの流れ

生徒:補助金をもらえるまでの手続きの流れを教えてください!

 

先生:最初に商工会議所や商工会の指導を受けて経営計画を作成するとともに、商工会議所や商工会から事業支援計画書を受け取るんだ。申請書類が揃ったら「Jグランツ」というWebシステムを使って申請する。審査には2~3ヵ月待たされるけど、その後、採択決定と交付決定に進むんだ。

 

生徒:採択されるまで事業を開始しないほうがいいですよね?

 

先生:そうだね。補助対象となる経費は、事業実施期間に支払ったものだから、交付決定した後に事業を開始し、そして、事業を完了しなければいけなんだ。その期間は申請タイミングにもよるけれど、6ヵ月くらいだね。

 

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生徒:補助金はいつもらえるのですか?

 

先生:補助金をもらえるのは、事業実施期間が終了して、実績報告書を提出し、確定検査を受けたあとなんだ。問題なければ、2ヵ月後くらいに入金されるよ!

 

[図表3]補助金申請から給付までの流れ

 

生徒:なるほど。実績報告のあとにもらえるということは、補助金が後払いってことですよね。

 

先生:そうだね。採択率が6割と高いし、採択されると50万円もらえるわけだから、申請したほうがいいね。

 

生徒:申請してみます! ありがとうございました。

 

 

岸田 康雄
国際公認投資アナリスト/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/公認会計士/税理士/中小企業診断士

 

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