(※写真はイメージです/PIXTA)

都内の高級賃貸マンションに住む佐藤さん(仮名・66歳)。現役時代は国内の超大手企業に勤め、ピーク時の年収は約2,000万円ありました。夫婦仲もよく、誰もが羨む生活を送る佐藤さんですが、「老後破産の危機」に頭を悩ませています。いったいなにがあったのでしょうか。FP Office株式会社の石井悠己也FPが、佐藤さんの老後破産危機の原因と回避する方法について解説します。

現役時代と年金額の「ギャップ」に注意

老後に受け取れる厚生年金の“理論上の”最高額は、月額でおよそ30万3,000円です。ただし、厚生年金は国民年金と異なり、年収が高く加入期間が長いほど受給額が増える仕組みのため、受給額に「満額」は存在しません。

 

この理論上の最高額を受け取るには、厚生年金に加入中に次の条件を満たしている必要があります。

 

●常に標準報酬月額の上限である63万5,000円以上の給与を受け取る
●賞与を常に年3回、標準賞与額の上限である150万円以上受け取る
●中学を卒業後すぐに就職し、70歳まで上記(63万5,000円×12ヵ月+150万円×3回=年収約1,200万円)の条件で継続して働く

 

理論上最高額の厚生年金と国民年金を合わせると、理論上の最高額は月額で約36万8,000円。これは年収に直すと、440万円程度です。

 

これはつまり、いくら現役時代にたくさん所得があっても、もらえる公的年金は最大で440万円ということです。さらに現実的なラインで考えると、高所得者でも200万円~250万円というところでしょう。

 

現役時代の所得が高ければ高いほど年金との収入差が大きくなるため、現役時代と同様の生活を維持したい場合、公的年金だけに頼るのは無理があります。

 

佐藤さんの場合も、年金収入は250万円~300万円程度と推測されるため、現役時代の収入(約2,000万円)と比べると大きな差があります。年金収入と貯蓄6,000万円だけでは、高い生活水準を維持するには不十分です。

 

さらに、長年専業主婦だった奥様の老齢年金はほぼ基礎年金部分のみ(年間約79万円)となります。そのため、佐藤さんに先立たれた場合、奥様が受け取れる遺族厚生年金はおよそ150万円となり、世帯で受け取れる年金額は大きく減少するのです。

※ 「65歳以上で老齢厚生(退職共済)年金を受け取る権利がある方が、配偶者の死亡により遺族厚生年金を受け取るときは、「死亡した方の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額」と「死亡した方の老齢厚生年金の報酬比例部分の額の2分の1の額と自身の老齢厚生(退職共済)年金の額の2分の1の額を合算した額」を比較し、高いほうが遺族厚生年金額となります」(日本年金機構HPより)

 

富裕層の老後破綻が起きる理由はさまざまですが、主な要因のひとつは給与所得から年金へ収入源が変化したことによる収入減少、そして保有している資産の価値低下です。

 

佐藤さんの場合も、リゾートマンションの価値低下により保有している資産が減少し、資産運用計画に大誤算が生じました。マンションにつぎ込んだ資金はおよそ1億円ですが、もしもマンションを購入していなければ、そのお金が手元に残っていたかもしれません。

 

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