(※写真はイメージです/PIXTA)

近年、老後の生活資金不足や老後破産の問題が深刻化しています。老後破産へ陥る要因のひとつとして、「投資詐欺」が挙げられますが、一体どのような手口で詐欺に遭ってしまうのでしょうか。本記事ではFPの牧元拓也氏が、田中さん(仮名)の事例とともに、投資詐欺の具体的な手口や被害の深刻さについて解説します。

投資詐欺によって消えた「明るいセカンドライフ」

田中さん(仮名)は製造業で長年勤め上げた65歳の男性です。

 

彼は年金として240万円(月20万円)の収入を得ることができ、勤務先の持ち株が値上がりしていたこともあり、売却後には5,000万円の資産がありました。そのため、セカンドライフに不安はなく、奥様や娘さんといままで行けなかった旅行を定期的に計画するなど明るい未来を考え、胸をときめかせていました。

 

しかし、田中さんは知らぬ間に投資詐欺に巻き込まれてしまうことに……。

 

発端は、友人から紹介された投資セミナーへの参加

田中さんは、ある日、友人から紹介された投資会社のセミナーに参加したことがきっかけで、投資に興味を持ちました。自分の資産をいま以上に増やすことができれば、海外旅行をする頻度を上げることができ、家族も喜んでくれると考えたのです。

 

高利回りを謳うその投資会社の説明は、「AI技術を使うことで少額の利益を積み重ねる売買システムがあり、そこから月利5~20%の配当が得られる」というものでした。田中さんは、世の中の技術の進歩に興奮を覚えつつも、魅力的な投資案件に1,000万円分の投資をしました。

 

その後も定期的にセミナーに参加し会社としても信頼できると感じました。参加する人が前向きに投資をしていたことも田中さんを安心させたのです。そして数ヵ月も立たず田中さんは利益を30%上げることができ、さらに利益を拡大するために追加資金を入れていき最終的には3,000万の投資を行いました。

 

しかし、投資会社からの支払いが滞り始め、紹介者でもある友人からも「資金を引き出すこともできない状態になっている」ことを聞きました。

 

田中さんは慌てて連絡を試みましたが、会社の電話はつながらず、担当者も姿を消してしまいました。

 

田中さんは、最初は事態を理解することができませんでしたが(というより受け入れたくなかった)、徐々に怒りが湧いてきます。自分の投資先が詐欺であったことに気づき、40年以上も勤め得た自身の退職金が失われたことを実感しました。そして、夫婦での旅行や外食を楽しむ日々を楽しみにしていましたが、実現できないことも痛感しました。

 

また、投資が順調だったため、いままで以上に支出が多くなっており、3,000万円の投資資金を失ったあとの預貯金は1,000万円になっていました。

 

将来の自宅修繕費、車の買い替え費用なども考えると月20万円の年金と1,000万円の預貯金だけでは生涯の生活費を賄うには足りず、このままでは老後破産の未来が待っています。

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