(画像はイメージです/PIXTA)

大切なご家族が亡くなった直後、遺族のみなさまは葬儀の手配・準備に追われることになります。そこで多くの方が直面するのが「どの葬儀会社に依頼すればいいのか」という問題です。慌ててインターネットで検索し、よく読まずに申し込むと、想定外の事態になるケースがあるため、要注意です。

療養に高額な費用が掛かった母、葬儀代は節約にしたい…

Aさんの母親が亡くなりました。体の弱かった母親は、これまで入退院を繰り返し、その後、胃ろうを造設することに。病院で3年間寝たきりでした。胃ろう造設をされた方のなかには、寝たきりのまま5年以上過ごされる方もいます。Aさんも病院に足を運びながら、母親の今後をずっと案じていました。

 

「不謹慎ですが、母が亡くなったとき、ほっとしたというのが正直なところです…」

 

Aさんはそのように、複雑な心中を打ち明けました。

 

何しろ3年間の入院生活には、多額の費用が掛かりました。父親の遺族年金が入ってきたとはいえ、費用はバカになりません。胃ろうのため、毎月6万円前後のお金が飛んでいくことになります。

 

そのため、Aさんは母親の葬儀費用をできるだけ少なく抑えたいと考えました。

 

しかし、悠長に調べる時間はありません。そこで頼りになるのがインターネットです。「お葬式安い」というキーワードを入力して検索しました。

 

すると、たくさんのサイトがヒットしました。なかには比較サイトもあるようです。そのひとつをクリックすると…ありました!

 

「葬儀に必要なものを含んだセットプラン7万円から(税抜き・割引適用後価格)」

 

Aさんは以前、母親の容体が急変したときに備えて、葬儀費用のおおまかな相場を調べていました。財団法人日本消費者協会がまとめた「第11回葬儀についてのアンケート調査」によると、葬儀費用の全国平均は約195万円。かなりの金額です。それだけに、「葬儀に必要なものを含んだセットプラン7万円から」という文面はAさんの気持ちをつかみました。

 

「ここしかない!」

 

Aさんはそう思うやいなや、即座に連絡しました。業者も心得たもので、速やかに打ち合わせを行うことになりました。

 

しかし、このあとすぐ、Aさんは現実を思い知ることになります。

 

広告に掲載されていた金額と実際の葬儀費用、相当な隔たりがあるみたい…」

「えっ、火葬するだけなの?」

新型コロナウイルスが「普通のインフルエンザ並み」とされる5類にダウングレードされ、ようやく行動規制がなくなったいま、Aさんは親族だけでなく、母親とご縁のあった方々を招こうと考えましたが、連絡した葬儀社の担当者から詳しく話を聞くと、希望の「7万円のセットプラン」は「直葬プラン」であり、希望する葬儀はできないことがわかりました。ホームページには「家族葬」と書いてあるのに…。

 

直葬プランとは、お通夜やお葬式を行わず、ご遺体を安置している場所から、直接火葬場にご遺体を移して火葬するというもの。当然、祭壇はなく、宗教者によるお経読みもありません。サイトをよくよく見てみると「無宗教者向けに仏具等を省いた最安プラン」と書かれているではありませんか…。

 

「いくらなんでも、それでは…」

 

そう思ったAさんは、改めてお通夜・お葬式を行う前提のプランを提示してもらうことにしました。

祭壇、お花、お経、戒名、食事…10万円以下で収めるのはムリ!

実際、葬儀費用にかかるお金の内訳は、どのようになっているのでしょうか。

 

式場の利用料金や火葬費用、ご遺体を運ぶ際の車両に加え、お通夜の席に出すお料理や返礼品を、参列者の人数に応じて揃える必要があります。そして、お通夜とお葬式を通じてお経をあげてくださる宗教者にお渡しするお布施も必要ですし、戒名を付けるのにもお金がかかります。

 

また、会葬御礼品やお葬式が終わった後、精進落としのお食事も、参列していただいた方々の人数分揃えなければなりません。さらにいえば、亡くなった母親とご縁のある方々をお呼びする以上、祭壇を設け、お花を飾る必要もあります。

 

これらにかかる費用をすべて合計して、それに消費税を上乗せした総額こそが、本当の意味で葬儀費用になるのです。

 

結論から言えば、Aさんの場合は100万円程度の費用が必要でした。全国平均の約195万円に比べれば安いものの、当初、7万円ですむと思っていたAさんにとって、100万円の葬儀費用は想定外の大出費です。

 

ですが、葬儀社の担当者がすぐ目の前にいる状態で、亡くなった母親を放置したまま別の葬儀社との相見積もりをとる時間はありません。

 

結局Aさんは、そのインターネットで目についた所に依頼することにしました。後でわかったことですが、この会社は「仲介業者」で、実際の葬儀は地元の葬儀社が来て、すべて段取りを進めたとのこと…。地元の葬儀屋さんいわく「仲介会社を通さずに直接依頼してくだされば、色々サービスできたのですが…。」と、苦虫を潰していたそうです。

 

いまのAさんにとって、100万円は経済的にも大きな負担でしたが、この期に及んではさすがに断りにくく「ほかの葬儀社に頼んでも、きっと同じだったはず」と、その時は自分に言い聞かせるほかなかったのです。

「参列者数・式場&火葬場の場所・宗教形式」を明確にして相談を

葬儀費用は葬儀社が決めるものではありません。一般的には葬儀社の担当者が、お客様からの要望をしっかり伺い、それに合うと思われる選択肢をいくつか提示してくれます。そのうえで、お通夜やお葬式に参列してくださると思われる方々の人数はどのくらいか、式場と火葬場はどこになるのか、そして宗教形式は何にするのかという3点をしっかり押さえたうえで、葬儀社に相談するとよいでしょう。

 

葬儀社に相談する際には、以下の点に注意しましょう。

 

葬儀場の提案力、商品ラインナップなどの対応力は各葬儀社によって差があります。それは、お客様が選べる選択肢の幅に影響が出てきますので、社歴や実績が多い、ある程度の構えを持った葬儀社に相談することが大切です。安心・安全を確保するためにも会社の信頼性を重視しましょう。

 

厚生労働省認定の技能審査に合格している葬祭ディレクターであれば、お客様にいくつかの選択肢を提案・アドバイスしてくれます。それを元に予算に応じた葬送プランをまとめ、葬儀費用も予算内、そして故人や参列者の方々にとっても心にのこる、よい葬儀になることでしょう。

 

また、最近では「葬儀の仲介業者」がTVCMなどを盛んにしています。これらの仲介会社が現地で葬儀をすると勘違いされている方が多くいらっしゃいますが、実際とは異なりますのでご注意ください。仲介業者を検討する場合には「どの葬儀屋さん」が「どこで葬儀」を施行してくれるのかを必ず確認してから、利用を吟味するようにしましょう。

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