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相続税対策を考えるとき、生前贈与で相続税の負担を軽減しようとされる人も多いでしょう。亡くなった後に引き継ぐ財産のいくらかをあらかじめ生前に渡しておくことで、相続財産を減らして相続税を減らすことは可能です。この場合、贈与した財産に対して贈与税がかかることになります。しかし、贈与税には一定の金額が非課税になるさまざまな特例があります。よく知られている年間110万円まで贈与税がかからない暦年贈与をはじめ、住宅取得に関する贈与や教育資金・結婚資金の贈与に対する特例などです。適用に条件はありますが、これらの特例を使うことで、生前贈与にかけられる税金を抑えることができます。そこで贈与税が非課税になる8つのパターンについて、詳しく解説していきます。

贈与税が非課税になる8つのパターン

パターン①生活費の贈与であればそもそも贈与税の対象外

●家族を扶養するための生活費や教育費は贈与税の対象外

●生活費や教育費以外に使った部分や贈与された年に使いきれなかった部分は贈与税が課税される

 

贈与税について考えるときにまず知っておきたいことは、生活費の贈与はそもそも贈与税の対象ではないという点です。

 

夫婦、親子、兄弟姉妹など扶養家族の間で生活費や教育費として贈与されたものは、通常必要とされる範囲であれば贈与税は課税されません。家族を扶養するための出費に贈与税を課税することは適切ではないからです。

 

親が子の学費や下宿先での生活費を負担する場合のほか、親が子の結婚費用や出産費用を負担する場合も贈与税は課税されません。

 

ただし、生活費や教育費として贈与されたにもかかわらず、預貯金や株式・不動産の購入など生活費や教育費以外に充てられた場合は贈与税の課税対象となります。

 

数年分の生活費や教育費をまとめて贈与した場合は、贈与された年に使いきれなかった部分に贈与税が課税されます。なお、教育費と結婚・子育て費用については一括贈与の非課税の特例があります。

 

パターン⓶暦年贈与であれば年間110万円まで非課税

●暦年ごとに贈与する場合は贈与された人1人あたり年間110万円まで非課税

●年間110万円以下であれば申告は不要

 

暦年(1月1日~12月31日)ごとに贈与する暦年贈与では、贈与された人1人あたり年間110万円までは贈与税が課税されません。

 

たとえば、1年間に500万円を贈与された場合は、110万円を引いた390万円に贈与税が課税されます。一方、1年間に100万円を贈与された場合は、贈与税は課税されず、申告の必要もありません。

 

暦年贈与を使った贈与税対策としては、年間110万円を複数年にわたって贈与する方法が知られています。年間の贈与額が110万円以下であれば、複数年にわたって贈与しても贈与税はかかりません。ただし、贈与契約の方法によっては、合計額を一括で贈与したとみなされて贈与税が課税されるので注意が必要です。

 

パターン③贈与税の配偶者控除(おしどり贈与)で2,000万円まで非課税

●夫婦の間で居住用の不動産を贈与した場合は2,000万円まで非課税

●婚姻期間が20年以上ある夫婦の間で適用できる

●税額が0であっても贈与税の申告は必要

 

夫婦の間で居住用の不動産(またはその購入資金)を贈与した場合は、2,000万円まで控除ができます。暦年贈与の基礎控除(110万円)と合わせると、実質2,110万円まで贈与税がかかりません。同じ配偶者からの贈与では1回に限り適用できます。

 

贈与は夫から妻、妻から夫のどちらでも構いませんが、婚姻期間が20年以上あることが必要です。また、贈与を受けた人は翌年3月15日までに、贈与された不動産(または贈与された資金で購入した不動産)に居住する必要があります。

 

贈与税の配偶者控除を適用するためには贈与税の申告が必要です。特例を適用して税額が0になる場合であっても、申告をしなければ適用したことにはならないので注意しましょう。

 

パターン④相続時精算課税制度で一時的に2,500万円まで非課税

●相続時精算課税制度では2,500万円まで非課税

●原則60歳以上の父母・祖父母と18歳以上の子・孫の間の贈与で適用できる(成年年齢引き下げ後の場合)

●一度適用すると同じ贈与者からの贈与で年間110万円の基礎控除は使えない(令和5年まで)

●税額が0であっても贈与税の申告が必要

 

相続時精算課税制度は、贈与者が亡くなるまでに贈与した財産と亡くなったときの遺産を一体のものとして課税する制度です。

 

相続時精算課税制度を適用すると2,500万円まで贈与税がかかりません。同じ贈与者からの贈与は複数年にわたって通算するため、1年目に1,500万円を贈与された場合は、2年目以降に贈与税がかからない金額は1,000万円となります。

 

2,500万円を超える部分には贈与税が課税されますが、納めた贈与税は、贈与者が亡くなって相続税を申告するときに精算することができます。

 

相続時精算課税制度を適用できるのは、次の要件を満たす場合です。

 

●贈与者は贈与があった年の1月1日時点で60歳以上の父母・祖父母であること

(令和5年12月31日までの住宅取得資金の贈与で一定の要件を満たす場合は年齢要件なし)

●受贈者は贈与があった年の1月1日時点で18歳以上の子・孫であること

(贈与が令和4年3月31日以前の場合は、贈与があった年の1月1日時点で20歳以上の子・孫であること)

 

相続時精算課税制度を適用するには贈与税の申告が必要です。この制度を適用して贈与税が0になる場合であっても、申告をしなければ適用したことにはならないので注意しましょう。

 

相続時精算課税制度は一度適用すると撤回できません。同じ贈与者からの贈与については、贈与者が亡くなるまで相続時精算課税制度を適用します。暦年贈与の年間110万円の基礎控除は使えませんが、令和6年以降は相続時精算課税制度にも年間110万円の基礎控除が新設されます。

 

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本連載は、税理士法人チェスターが運営する「税理士が教える相続税の知識」内の記事を転載・再編集したものです。

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