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相続税対策を考えるとき、生前贈与で相続税の負担を軽減しようとされる人も多いでしょう。亡くなった後に引き継ぐ財産のいくらかをあらかじめ生前に渡しておくことで、相続財産を減らして相続税を減らすことは可能です。この場合、贈与した財産に対して贈与税がかかることになります。しかし、贈与税には一定の金額が非課税になるさまざまな特例があります。よく知られている年間110万円まで贈与税がかからない暦年贈与をはじめ、住宅取得に関する贈与や教育資金・結婚資金の贈与に対する特例などです。適用に条件はありますが、これらの特例を使うことで、生前贈与にかけられる税金を抑えることができます。そこで贈与税が非課税になる8つのパターンについて、詳しく解説していきます。

パターン⑤住宅取得等資金の贈与で最大1,000万円まで非課税

●父母や祖父母から住宅取得資金の贈与を受けた場合に一定額が非課税になる

●受贈者には18歳以上で所得が2,000万円以下などの要件がある(成年年齢引き下げ後の場合)

●購入する住宅には延床面積や建築時期などの要件がある

●税額が0になる場合であっても贈与税の申告が必要

 

令和5年12月31日までに父母や祖父母など直系尊属から住宅を取得するための資金を贈与された場合、一定の金額まで贈与税が非課税になります。非課税限度額は贈与の時期や住宅の種類、住宅取得の契約締結日に応じて、次の表のとおり定められています。

 

 

 

 

この非課税の特例を適用するための主な要件は次のとおりです。これらの要件をすべて満たす必要があります。

 

●受贈者は贈与者の直系の子・孫で、贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上(※)であること

(※:贈与が令和4年3月31日以前の場合は、贈与を受けた年の1月1日時点で20歳以上)

●贈与を受けた年の受贈者の所得が2,000万円以下(※)であること

(※:取得する住宅の面積が40㎡以上50㎡未満の場合は、1,000万円以下)

●受贈者は過去に住宅取得資金について贈与税の非課税措置を受けていないこと

●住宅の売主、建築工事の発注先が配偶者や親族でないこと

●贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅を取得してそこに住むこと。または住むことが確実であること

 

取得する住宅についても、次のような要件があります。

 

●床面積が40㎡以上240㎡以下で、その半分以上を居住用にすること

●(贈与が令和3年12月31日以前の場合)新築または築20年(耐火建築物は築25年)以内または一定の耐震基準を満たしていること

●(贈与が令和4年1月1日以後の場合)新築または新耐震基準等一定の耐震基準を満たしていること。登記簿上の建築日付が昭和57年1月1日以後であれば新耐震基準に適合しているとみなす

 

この非課税の特例を適用してもなお残額がある場合は、暦年贈与の年間110万円の基礎控除または相続時精算課税制度の2,500万円の特別控除を使うことができます。

 

この非課税の特例を適用するには贈与税の申告が必要です。特例を適用して贈与税が0になる場合であっても、申告をしなければ非課税にはならないので注意しましょう。

 

パターン⑥教育資金の一括贈与で1,500万円まで非課税

●父母や祖父母から教育資金の一括贈与を受けた場合は1,500万円まで非課税になる

●金融機関に開設した「教育資金口座」で資金を管理する

●資金を引き出したときは教育費の領収書を金融機関に提出する

 

令和8年3月31日までに、30歳未満の人が父母や祖父母など直系尊属から教育資金として一括贈与を受けた場合は、受贈者1人につき1,500万円まで贈与税が非課税となります。このうち、学習塾や習い事など学校以外に支払うものは500万円までが非課税となります。

 

もともと、扶養している家族に対して支払う教育費に贈与税は課税されませんが、贈与された年に使い切ることが前提です。この制度は、複数年にわたって必要な資金を一括贈与しても非課税になる点が特徴です。

 

この制度を適用するためには、贈与を受けた人が金融機関に「教育資金口座」を開設し、金融機関を経由して税務署に届け出る必要があります。贈与された資金は教育資金口座に預け入れ、必要になったときに引き出します。資金を引き出したときは、教育費の領収書を所定の期日までに金融機関に提出しなければなりません。

 

パターン⑦結婚・子育て資金の一括贈与で1,000万円まで非課税

●父母や祖父母から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合は1,000万円まで非課税になる

●金融機関に開設した「結婚・子育て資金口座」で資金を管理する

●資金を引き出したときは結婚・子育て費用の領収書を金融機関に提出する

 

令和7年3月31日までに、18歳以上50歳未満の人(※)が父母や祖父母など直系尊属から結婚や子育ての資金として贈与を受けた場合は、受贈者1人につき1,000万円まで贈与税が非課税となります。このうち、結婚のための資金は300万円までが非課税となります。

 

(※:贈与が令和4年3月31日以前の場合は、20歳以上50歳未満の人となります。)

 

もともと、扶養している家族の結婚費用や出産費用は贈与税の課税対象ではありませんが、贈与は結婚や出産のたびに行うことが前提です。この制度は、結婚や子育てのために必要な資金を前もって一括贈与しても贈与税が非課税になる点が特徴です。

 

この制度を適用するためには、贈与を受けた人が金融機関に「結婚・子育て資金口座」を開設し、金融機関を経由して税務署に届け出る必要があります。贈与された資金は結婚・子育て資金口座に預け入れ、必要になったときに引き出します。資金を引き出したときは、結婚・子育て費用の領収書を所定の期日までに金融機関に提出しなければなりません。

 

パターン➇障害者への贈与で最大6,000万円まで非課税

●特別障害者への贈与は6,000万円まで非課税

●特別障害者以外の特定障害者への贈与は3,000万円まで非課税

 

障害者に贈与した場合は、最大6,000万円まで贈与税が非課税になります。受贈者が特別障害者の場合は6,000万円まで、特別障害者以外の特定障害者の場合は3,000万円までが非課税になります。

 

この制度を適用するためには、信託銀行に資金を信託し、金融機関を経由して税務署に届け出ます。信託口座の資金は、障害者である受贈者の生活費や医療費として定期的に払い出されます。

 

非課税にするためには申告が必要なケースもあるのでご注意

以上、贈与税が非課税になる8つのパターンについてお伝えしました。これらの制度を適用するためには、さまざまな要件を満たす必要があります。実際に贈与税の非課税制度を適用したい場合は、国税庁ホームページ「タックスアンサー」を確認するか、贈与に詳しい税理士に相談することをおすすめします。

 

また、申告を忘れると非課税にならず、本来払わなくてもよかった本税やペナルティを払わなくてはならなくなるケースもあります。

 

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本連載は、税理士法人チェスターが運営する「税理士が教える相続税の知識」内の記事を転載・再編集したものです。

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