(※写真はイメージです/PIXTA)

誹謗中傷が、社会問題となっています。ときに人の命をも奪いかねない誹謗中傷は倫理上問題があるのみならず、刑法上の罪に該当して逮捕される可能性もある行為です。では、誹謗中傷で逮捕された事例にはどのようなものがあるのでしょうか? 本記事では、誹謗中傷で逮捕された事例とともに、誹謗中傷に対してとり得る法的措置について、弁護士がくわしく解説します。

「誹謗中傷」とは?

誹謗中傷は法律用語ではなく、「誹謗中傷をしたら〇〇の刑に処する」などと法令に記載されているわけではありません。一般的には、相手を傷付ける悪口などのことを誹謗中傷ということが多いでしょう。

 

誹謗中傷は、インターネット上で行われる場合もあるほか、ビラを撒くなど現実社会で行われる場合もあります。

誹謗中傷に対する主な2つの法的措置

誹謗中傷の被害を受けた場合には、相手に対してさまざまな法的措置が検討できます。誹謗中傷に対してとることができる主な法的措置は、次のとおりです。

 

ただし、どのような内容であれば違法となるのかなどという明確な基準があるわけではありませんので、お困りの際にはまず弁護士へご相談ください。

 

1.刑事告訴

誹謗中傷に対する法的措置の1つ目の方法は、刑事告訴です。刑事告訴とは、警察などに事件を申告し、相手の処罰を求める意思表示のことです。

 

特に、誹謗中傷に該当しうる、侮辱罪や名誉毀損罪は、告訴がなければ相手に刑事責任を追及できない「親告罪」とされています。そのため、相手の刑事責任を追及したい場合には、刑事告訴をしなければなりません。一般的に、刑事告訴をするためには、あらかじめ相手の身元を特定したうえで行う必要があります。

 

しかし、インターネット上での誹謗中傷の場合には、相手が誰であるのかわからない場合も少なくないでしょう。そのような際には、誹謗中傷の舞台となったSNSなどの運営企業(X(旧Twitter)社など)とプロバイダ(KDDIなど)に発信者情報の開示請求を行い、相手の特定を行ったうえで刑事告訴を行う流れとすることが多いです。なお、「誹謗中傷罪」などという罪名は存在せず、次の罪への該当などを検討することとなります。

 

■名誉毀損罪

名誉毀損罪とは、「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者」が該当する罪です(刑法230条)。なお、「事実」とは本当のことという意味ではなく、嘘の内容であっても具体的な内容であれば、これに該当する可能性があります。

 

たとえば、「〇〇社の〇山A男は会社の金を横領して、不倫三昧」などと多くの人が閲覧できるSNSなどに投稿した場合には、名誉毀損罪に該当する可能性があるということです。信用毀損罪の刑罰は、3年以下の懲役もしくは禁錮、または50万円以下の罰金です。

 

■侮辱罪

侮辱罪とは、「事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者」が該当する罪です(同231条)。名誉毀損罪と異なり、事実の適示が必要とされていないことが特徴です。

 

たとえば、「〇〇社の〇山A男は無能だ」など具体的な内容を挙げずに相手を侮辱する内容を多くの人が閲覧できるSNSなどに投稿した場合には、侮辱罪に該当する可能性があるでしょう。侮辱罪の刑罰は、1年以下の懲役もしくは禁錮もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料です。従来は勾留もしくは科料のみであったところ、令和4年(2022年)7月7日から「1年以下の懲役もしくは禁錮もしくは30万円以下の罰金」が追加されました。

 

■脅迫罪

脅迫罪とは、相手や相手の親族の「生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者」が該当する罪です(同222条)。

 

ブログのコメント欄で「お前を殺してやる」などと書き込んだ場合などには、脅迫罪に該当する可能性があるでしょう。脅迫罪の刑罰は、2年以下の懲役または30万円以下の罰金です。

 

■業務妨害罪・信用毀損罪

信用毀損罪とは、「虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者」が該当する罪です(同233条)。嘘の情報を流してお店や会社などの評価を下げた場合には、これに該当する可能性があるでしょう。業務妨害罪・信用毀損罪の刑罰は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金です。

 

2.損害賠償請求

誹謗中傷に対する法的措置の2つ目は、損害賠償請求です。こちらは刑事責任とは異なる民事責任の話であるため、警察や検察は関係ありません。また、仮に裁判で損害賠償請求が認められたとしても、相手に前科がつくわけではありません。

 

誹謗中傷をした相手に対して損害賠償請求をするには、まず相手が誰であるのか特定することが必要となります。たとえば、匿名のアカウントに対して「慰謝料として〇〇円を支払え」という趣旨のメッセージを送ること自体はできたとしても、メッセージを無視されたりアカウントを消されてしまったりすれば、それ以上手の出しようがなく、請求手法として現実的ではないためです。

 

相手が特定できたら、相手に対して内容証明郵便を送るなどして損害賠償請求を行います。任意での支払いに応じない場合には、裁判で請求をする流れとなります。

 

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