前回は、不動産ファンドを選ぶ際に確認したい「リスクへの対策」について説明しました。今回は、不動産ファンドの見極めに有効な「ER」と「不動産鑑定評価」について見ていきます。

不動産の物理的なリスクを調査・分析した「ER」

不動産ファンドでは、前回述べたように物件を購入する際にデューデリジェンスが行われています。デューデリジェンスが適切な形でなされていれば、リスクをある程度回避することが可能なはずです。

 

逆にいえば、デューデリジェンスが不十分もしくは不適切な形で行われている場合には、リスクがより高まるおそれがあるといえるでしょう。

 

そこで、不動産ファンドのリスクを適格に把握するために、デューデリジェンスの結果をまとめた文書の開示を、具体的にはエンジニアリング・レポートと不動産鑑定評価書をAM会社に求めてみてもよいかもしれません。

 

「エンジニアリング・レポート」とは、不動産の物理的な側面のリスクを調査・分析した報告書であり、英語名の「EngineeringReport」を略して一般に「ER」と呼ばれています。

 

図表1に示すように、①建物状況調査報告書、②建物環境リスク評価報告書、③土壌汚染リスク評価報告書、④地震リスク評価報告書の4つの文書で構成されています。

 

【図1 エンジニアリング・レポートの中身】

経済的側面でのリスク分析に必要な不動産鑑定評価書

一方、不動産鑑定評価書は、鑑定評価の結果をまとめた文書です。鑑定評価とは、不動産を客観的に評価してその価値を金額で表すことであり、国土交通省または都道府県に登録されている不動産鑑定業者によって行われます(不動産の経済的側面についてのリスクを把握する作業といえるでしょう)。

 

不動産を鑑定評価する方法としては、図表2にあげたように①原価法、②取引事例比較法、③収益還元法の3種類があります。

 

【図2 原価法・取引事例比較法・収益還元法】

 

エンジニアリング・レポートや不動産鑑定評価書の開示を求めても、拒まれることがあるかもしれません。その場合には、開示されない理由について納得できるだけの十分な説明を受けられるか否かで、投資するかどうかを決めるとよいでしょう。

本連載は、2016年3月28日刊行の書籍『ローリスクで年利7% 1万円から始める不動産ファンド投資』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。本書に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本書の内容は著者の個人的な見解を解説したものであり、著者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本書の情報を利用した結果による損害、損失についても、出版社、著者並びに本書制作関係者は一切の責任を負いません。投資のご判断はご自身の責任でお願いいたします。

ローリスクで年利7% 1万円から始める不動産ファンド投資

ローリスクで年利7% 1万円から始める不動産ファンド投資

小山 努

幻冬舎メディアコンサルティング

投資で資産を増やさなければ、将来の見通しが立たない――。 一般のサラリーマンの間でも、企業や社会保障に頼らずに資産をつくるしかないと、「貯蓄から投資へ」向かう傾向が強まっています。 本書では、理想先な投資先とし…

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